矯正治療後は、歯列を安定させ、後戻りを防ぐために保定装置(リテーナー)の装着が必要です。矯正治療そのものよりも口の中への異物感が大きく、苦手という方も少なくないようですが、この装着期間は一体どれくらいが目安なのでしょうか。今回はリテーナーの装着期間について、ご紹介します。
目次
1 年齢や矯正の度合いによって治療期間は違う
歯の動きやすさやあごの成長度合い、筋力の発達などによって、リテーナーの装着期間は大きな個人差があります。
1-1 1~3年くらいの継続治療が必要
個人差はありますが、最低でも1年程度の継続治療が必要と考えられています。長い人では、3年程度はしっかりとリテーナーによる歯列安定を目指すことになるでしょう。一般的には、歯列矯正にかかったのと同じか、それ以上の時間がかかるとされています。
もちろん、その期間中24時間つけっぱなし、というわけではない人もいますが、ある程度長い戦いが続きますので、腰を据えて向き合う必要があるのです。
1-2 若いほど早くリテーナーを外せる可能性が高い
18歳以下の子どもは成長の途中にあります。こうした子どもは、筋力やあごの骨などが未完成、発達途中であり、歯列矯正をした場合も比較的早く順応することができます。
逆に、成長しきった大人であれば、矯正自体にも時間がかかりますし、リテーナーの装着機関も比較的長くなりやすい傾向にあるのです。
2 1日の装着時間は?
口の中に異物感を覚えやすいリテーナーですが、1日の間にどの程度の時間装着していればいいものなのでしょうか。
ここでは、強制的に24時間装着されている状態の固定式(フィックスタイプ)ではない、着脱可能なリテーナーを2年以上使う場合についてご紹介します。
2-1 しばらくはほぼ1日中
着脱可能なリテーナーであっても、矯正終了後1年半くらいは、ほぼ1日中付けたままとなります。外していい時間は、食事のときと、歯を磨くときのみです。
歯列矯正後は、歯の位置が動きやすくなっています。加えて、人体には元の構造に戻ろうとする力(恒常性、ホメオスタシス)が働き、元の歯列に後戻りしてしまうのです。
そのため、整った歯列が安定するまでの間は、リテーナーを極力長い時間つけている必要があります。
2-2 歯列が安定してきたら時間を減らして
矯正した歯列が安定してきたら、装着している時間を減らすことができます。もちろんこれは自己判断ではなく、歯科医と相談の上で決定するものです。
一般的には、寝ている間だけリテーナーを付ける、ということが多いようですが、どういった時間にどの程度装着しておくかについては、口腔内の様子や個人の生活スタイルなどによっても大きく異なりますので、一概には言えません。
2-3 保定期間終了後も装着が推奨される
歯科医からリテーナーを外して生活してもいいと言われた人であっても、リテーナーの定期的な装着は推奨されています。
歯並びは一度確定したら二度と変わらないようなものではなく、口の周りの筋肉や呼吸の仕方などでも変化が生じます。そのため、矯正前の歯列に少しずつ戻ろうとする力が働くことは少なくないのです。
せっかく長い期間と高額な費用をかけて矯正するのですから、きれいな歯並びを維持したいと考えるのは当然のことだと思います。そのために、週に2~3回程度、就寝時にリテーナーを付けることは、歯列の後戻りを極力防ぐのに有効な手段なのです。
3 通院の期間は?
リテーナーを付けている間は、歯科医の定期診療が必要となります。
診てもらう内容は、後戻りが起きそうになっていないか、噛み合わせは悪くないか、口腔衛生状態は良好か、などです。
適切な治療のためにも、面倒がらずに、歯科医と決めた頻度での通院を行うようにしてください。
3-1 継続治療中は通院することになる
基本的に、リテーナーを入れている期間中は必ず定期通院が必要になります。そのため、家や職場の近所にある、通院しやすい歯科医院というのは、矯正治療を行ってもらうために重要なファクターとなります。
矯正治療期間も考えると、2~3年程度は最低でもかかると考えておきましょう。歯列がかなり乱れている場合や、先に虫歯治療を行う必要がある場合などは、トータルで5年近くかかる可能性もあります。
途中で治療院を変えるときには、矯正や治療に関する履歴などを記載した紹介状などを作成してもらうことが必要です。
長期間通院することを念頭に置いて、歯科医院選びは慎重に行うことをおすすめします。
また、矯正治療の前の段階で、保定にかかる治療費を支払っている場合(トータルフィー制)は通院費がかかりませんが、そうでない場合(処置別支払い制)は1回の診察で5,000円程度の費用が掛かります。
あらかじめ、どのような契約になるかを確認しておきましょう。
3-2 リテーナー移行直後は月に1度
リテーナーを使い始めた直後は、月に1度程度の通院が目安となります。これは、特に歯の動きやすい矯正治療を終えた最初の期間で、リテーナーがうまく機能しているかどうかを確認するためです。
リテーナーが問題なく機能しているのであれば、2~3か月に1度程度に通院頻度を減らすこともできます。
逆に、装着感に強い違和感があったり、かみ合わせがおかしくなっていたり、リテーナーを装着していることによって虫歯など口腔衛生状態が悪化していたりする場合などについては、リテーナーの調整などを行うために、頻繁な通院が必要となります。
3-3 問題がなくなれば半年に1度
保定がうまく進んでいった場合、治療の終盤では半年に1度程度の通院でOKになります。これも、基本的には歯科医と相談の上で決定することになりますので、自己判断で「そろそろ半年に1回でいいだろう」と通院頻度を減らすようなことはしてはいけません。
最終的に、歯科医の判断によってリテーナーによる治療は終了となれば、定期通院は必ずしも必要ではなくなります。
ただ、歯列矯正に限らず、虫歯や噛み合わせ、歯肉の健康状態などを診てもらうという意味でも、半年に1度程度の定期通院が推奨されます。自分では気付きにくいトラブルも、定期的にチェックしてもらっていれば早めに知ることができ、対処が可能になるのです。
保定期間が終わった後も、なるべく定期通院を行い、お口の健康の維持増進に努めましょう。
4 リテーナーの治療は大変!でも後戻りを防ぐためには必要
リテーナーによる治療は、慣れるまでの間は不快感が強く、できればすぐにでも外したいと感じる人も多いでしょう。しかし、矯正後の歯列を安定させるためには必要不可欠な治療です。
1年半程度の期間、ほぼ1日中装着しての生活は大変ですが、美しい歯並びのために継続して頑張りましょう。
また、トータルで2~3年程度の保定期間ですが、終了後も週に2~3日程度、就寝時などにリテーナーを装着しておくことで、歯並びが元に戻ろうとするのを防ぐ効果も期待できるのです。
保定期間中の治療に限らず、歯科医と相談の上、よりよい歯列を維持できるようなリテーナー選びも進めていくことをおすすめします。