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「痛みが少ない」矯正治療法とは?

近年の歯科治療はどの分野においても「治療中の痛みを極力抑えること」がスタンダードとなっている時代。矯正治療も例外ではなく、かつては“当たり前”とされていた治療中の痛みを、可能な限り少なくする取り組みがはじまっています。

 

矯正治療のハードルを高くする「費用」「時間」「痛み」のうち、「痛み」を理由に治療をためらっているのであれば、ぜひ今回の記事を参考に治療にチャレンジしてみましょう。

1.矯正治療で歯が痛む理由

1-1.主な原因は“血行障害”によるもの

正治療でとくに苦痛を感じやすいのは、歯が動く際の痛みです。この痛みは矯正装置を装着、または調整してから3~6時間後にあらわれ、24~36時間後にピークを迎えたあと徐々に消失していきます。その痛みの主な原因は、歯に与えられた力によって歯根膜に生じる血行障害です。

 

私たちの歯は顎の骨と直接結びついているのではなく、その間に「歯根膜(しこんまく)」という軟らかいクッションを挟んだ状態で位置しています。人間の噛む力はおよそ40~60kgといわれていますが、これほど大きな力が加わっても食事の際に痛みを感じないのは、歯根膜がその衝撃を和らげるからです。

 

ここで1つ不思議なのは、人間の体重ほどの力では痛みを感じないのに、なぜ矯正治療では歯に痛みを感じてしまうのかという点です。実は私たちが食べ物を噛むのは時間にして1日20分ほどにしか過ぎず、このような短い時間であれば歯根膜の許容範囲であり、痛みを抑えることができます。

 

一方で歯根膜は矯正治療のように長時間加えられる力には対応しきれません。歯根膜に力が長時間加わると、その力によって歯根膜が押しつぶされ、やがて血行不良をおこして痛みを生じさせます。この痛みは長時間の正座のあとに足が痛んだり、デスクワークで肩や首に痛みを感じたりするのと同じです。

 

ただ歯根膜には形が変わっても元の状態に戻ろうとする「復元力」があり、押しつぶされた側の歯根膜は少しずつ骨を溶かしながら元の形に戻ります。矯正治療ではこのような歯根膜の伸び縮みを利用して歯を動かしており、これに合わせて痛みも出たり消えたりを繰り返します。

1-2.痛み減らすカギは「弱い力」

歯が動く時の痛みの原因が歯根膜の圧迫によって生じるならば、歯に加える力を弱めればおのずと痛みは抑えられるはずです。しかし歯への力を弱めてしまうと、歯が動かなくなるのではという疑問も浮かびます。

 

ただ加える力が弱くても歯が動く実例があります。例えば舌を前に突き出だすクセや、下唇を噛んだりするクセといった歯並びを悪くする「悪習癖(あくしゅうへき)」もその1つです。このようなクセは舌や唇の動きによって与えられる持続的な力が歯を動かし、結果として歯並びを悪くします。一方でこのような歯の動きには痛みをともなうことがありません。実際に子どもの矯正治療では、舌や頬、唇の筋肉による自然な力を利用して、歯並びを改善することがあります。

 

以上のように、歯を動かすにはやみくもに力をいれて引っ張ればいいというわけでなく、歯が動くのに適した力を長く加え続けることも重要になります。弱い力で痛みを少なくし、さらに矯正期間にも影響を与えないのが、次項からご紹介する「ライトフォース理論」に基づいた矯正治療法です。

2.“治療が痛い”はもう古い⁉「ライトフォース理論」とは?

2-1.従来の1/5~1/2の矯正力で治療中の痛みを軽減

ライトフォース理論とは、従来の矯正治療よりも「少ない(lite)力(force)」によって歯を動かす新しい矯正治療の考え方です。一般に歯を動かすのに必要な力は300~500mgほどといわれていますが、ライトフォース理論に基づく治療では、従来の1/5~1/2程度まで矯正力を抑え、治療による痛みを軽減していきます。

2-2.力が弱くても“矯正スピードはUPする”

ライトフォースによる治療で気になるのが、「痛みが減るかわりに治療が長くなるのでは?」という治療期間の問題です。弱い力でも歯が動くとはいえ、そこに3年も5年もかかってしまってしまえば治療のハードルも高くなります。ただライトフォースのメリットには、治療の痛みを抑えるほかにも、治療期間を短縮できることが挙げられています。

 

歯は強い力で引っ張るほど速く動くと思われがちですが、実はこれは逆効果であることは様々な研究により明らかとなっています。その理由は、歯根膜を強く圧迫すると血流が悪くなり、周囲の組織に十分な血液が行き渡らなくなるからです。歯は“押される側”の骨が溶け、“引っ張られる側”の骨が再生することで動いていきます。歯根膜の血流が滞るとこの骨の代謝がうまく進まず、歯が動くスピードも遅くなってしまうわけです。

 

ライトフォースの良い所は、血管の弾力よりも弱い力を加えることで圧迫を防ぎ、血流を妨げない点にあります。骨にも十分な血液が補えるため代謝も活発になり、結果して歯の移動スピードも速くなります。近年の矯正治療は痛みの軽減だけでなく、治療スピードの観点からも、ライトフォースによる治療が主流になってきています

3.痛みが少ない矯正装置

3-1.セルフライゲーションブラケット

ライトフォース理論に基づく治療で代表的なのが、セルフライゲーションブラケットを使用した治療法です。従来のブラケットとは異なり、セルフライゲーションブラケットはワイヤーを固定する際に、ゴムや針金を使用しないのが特徴です。

 

ワイヤーをゴムや針金で固定する従来の治療では、ブラケットとワイヤーの間に摩擦を生じさせます。この摩擦による力は歯に余計な負担を与えて痛みを感じやすくさせるほか、適正な力が歯に加わりにくく、治療スピードを遅らせる原因にもなっています。

 

セルフライゲーションブラケットは本体にワイヤーを固定するシャッターやフタが内蔵されており、ワイヤーとブラケットの間に適度な“あそび”を設けています。この“あそび”によって歯には余計な力が働かす、治療による痛みが少なくなります。また摩擦が少ない分、矯正力をダイレクトに歯に伝えられるため、歯を効率よく動かしやすいのもメリットです。

3-2.マウスピース矯正

マウスピース矯正は“装置が目立たない”ことで脚光を浴びる治療法ですが、実は従来の治療より痛みが少ないのもメリットの1つです。この矯正法では複数枚のマウスピースの着脱より歯を動かしていきますが、装置によって歯に加えられる力はライトフォース理論に基づいて設計されています。これにより治療中の痛みも少ないほか、定期的に交換するマウスピースは持続的な力が加わりやすいため、スピーディーに歯を動かせるようになります。

 

一方でマウスピース矯正は比較的症状の軽い歯並びに適した治療法であり、歯並びの状態によっては治療が適用できない場合もあるため注意が必要です。マウスピース矯正での治療が難しい場合は、他の治療法(セルフライゲーションブラケットなど)を検討してみましょう。

4.まとめ

これまで矯正治療の痛みは“歯がきちんと動いている証拠”とみなされ、ある程度は我慢が必要というのが一般的でした。しかし歯が動くメカニズムの詳細が明らかになるにつれ、近年は「弱い力による治療」が主流となり、治療による痛みのストレスも軽減できるようになっています。痛いのがイヤで矯正治療をあきらめるのはもう古い!ぜひ今回の記事を参考に、キレイな歯並びへの第一歩を踏み出してみましょう。

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