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「短期間」で矯正治療をする方法はあるの?

矯正治療のネックの1つといえば「治療期間の長さ」。歯並びの状態にもよりますが、矯正治療にかかる期間は平均2~3年といわれ、一般的な歯科治療よりも長い期間を要します。ただ近年は歯の移動スピードを速くする治療法も誕生し、通常の治療の2~3割ほど期間を短縮できるようになってきました。

 

今回は治療期間をできるだけ短くしたいという方へ、その具体的な方法や治療のメリット・デメリットなどをご紹介します。

1.歯は“1ヶ月に1mm程度”しか動かない⁉

矯正治療というと「歯を引っ張って動かす」というイメージがありますが、ただその仕組みは“綱引き”のように単純ではありません。歯はその周囲を硬い骨で覆われているため、歯を動かすためには進行方向にある骨を壊し、さらに動いてできたスペースには新たな骨を作る必要があります。このような骨の代謝には一定の時間が必要で、そのスピードも1ヶ月に1mm程度といわれています。

 

一方で近年の研究が進むにつれ、歯への力の加え方を工夫したり、骨の代謝をうながしたりすることで、通常よりも早く歯が動かせることが明らかになってきました。実際にこれらの理論に基づいた治療法は、従来の方法より20~30%ほど治療期間の短縮に成果を上げています。では次項からその具体的な方法を4つ、詳しくご紹介していきましょう。

2.ローフリクションブラケットによる治療

2-1.ワイヤーとブラケットの“摩擦”を抑えた治療法

歯の表面に貼りつけたブラケットに細いワイヤーを固定し、ワイヤーが元の形に戻ろうとする力を利用して歯を動かす手法は、矯正治療で最も広く用いられています。ローフリクションブラケットも同様のメカニズムで歯を動かしていきますが、従来のブラケットと比べてワイヤーとの摩擦が少ない(Low=低いfriction=摩擦)のが特徴です。

 

歯を効率よく動かすには「至適矯正力」と呼ばれる適度な力を加えることが重要で、加える力がそれより弱くても強くても、歯が動くスピードは遅くなってしまいます。一方でブラケットとワイヤーをゴムや細い針金で固定する従来の方法は、両者の間に生じる摩擦力が至適矯正力を弱めてしまい、歯を効率よく動かすことができません。

 

そこで新たに開発されたのが、ワイヤーをゴムや針金でなく、ブラケット本体に内蔵された開閉式シャッターで固定するローフリクションブラケットです。ローフリクションブラケットはワイヤーとの間のわずかな余裕によって両者の摩擦を減らし、歯に無駄な力がかかるのを抑えます。歯を動かすための力が一定に保たれるため、従来よりも歯が効率よく動き、治療期間を短縮していきます。

2-2.メリットとデメリット

ローフリクションブラケットは歯が速く動くほかに、余計な力がかからないため治療中の痛みが少ないのがメリットです。またゴムや針金で固定する従来の治療にくらべ、1回にかかる治療時間も短くなります。

 

デメリットは従来のブラケットよりもサイズが大きい点や、シャッター部分が目立ちやすい点などが挙げられます。

3.インプラント矯正

3-1.一度に動かす歯の本数を増やせる

インプラント矯正は直径1.4~2mm、長さ6~10mmのミニスクリュー(ネジ)を顎の骨の表面に埋め込み、そこを固定源にして歯を動かしていく矯正治療です。

 

従来のワイヤー矯正は奥歯(大臼歯)を固定源にしますが、一度に多くの歯を動かそうとすると、その大きな力に引っ張られて奥歯が前方に動いてしまう可能性があります。そのため従来の方法では先に犬歯を動かし、それから残りの前歯を動かすといったように、歯を順番に移動させながらでしか治療を進めることができません。

 

これに対し、顎の骨に埋め込まれた固定源(スクリュー)は非常に強固で、強い力をかけても動く心配がないため、一度に複数本の歯を動かすことが可能になります。またスクリューを埋め込む位置によって歯に上下・左右のあらゆる方向から加えられるため、歯を立体的に、効率よく動かすことができます。

3-2.メリットとデメリット

インプラント矯正は従来の治療よりも歯を動かす自由度が広く、これまで治すのが難しいといわれていた歯並びの治療も可能にします。また強固な固定源によって奥歯も動かしやすくなるため、通常であれば抜歯が必要なケースでも、抜歯なしで治療できる可能性が高くなります。

 

一方で治療にはスクリューを埋め込む手術が必要になるほか、スクリュー代などを含めると通常よりも費用がやや高額になります。またスクリューの周りを常に清潔に保たないと、歯ぐきや骨に炎症を起こすおそれがあるため注意が必要です。

4.コルチコトミー

4-1.骨の一部を削って、代謝をうながす

歯の周囲を囲む歯槽骨は、硬い「皮質骨」と、その内側の軟らかい「海綿骨」から構成されています。コルチコトミーは硬い皮質骨の一部を削って取り除いたり、海綿骨にわずかな切れ込みを入れたりすることで、歯の移動スピードを速めていく外科的治療法です。

 

先にも述べたように、歯は進行方向にある骨を少しずつ破壊し、さらにその後ろ側には新たな骨を再生しながら動きます。コルチコトミーの原理は、破壊に時間のかかる硬い骨(皮質骨)を取り除いて歯を動かしやすくすることにあります。また軟らかい海綿骨に小さな切れ込みをいれることで、骨の代謝をうながし治療のスピードを速めていきます。

4-2.メリットとデメリット

従来の矯正治療にコルチコトミーを併用すると、半年から1年ほど治療期間が短縮できるといわれています。またコルチコトミーの処置後に再生した骨は前より強度が増すため、矯正治療後の後戻りが少ないのもメリットです。ただ治療には外科手術が必要であるほか、矯正治療とは別途の費用がかかります。

 

5.オルソパルス(光加速矯正装置)

5-1.赤外線で骨の細胞を活性化

オルソパルスとは、波長850nmの赤外線を口腔内に照射するマウスピース型の装置です。オルソパルスから発せられる赤外線には骨の細胞を活性化させ、代謝をうながして歯の移動スピードを速める効果があります。

 

オルソパルスは矯正治療と併用して使用するものですが、なかでもマウスピース矯正との相性がよいといわれています。マウスピース矯正にオルソパルスを併用すると、通常は7~14日ごとのマウスピースの交換が3~5日に短縮され、治療終了の時期が早まります。

 

5-2.メリットとデメリット

オルソパルスの赤外線には血流をうながす働きがあり、治療による痛みを和らげる効果が期待できます。使い方も簡単で、照射時間も10分程度と使用によるストレスをそれほど感じません。

 

ただ毎日続けないと効果がないため、人によってはそれが負担になる場合があります。また装置の購入には別途費用がかかります。

6.矯正治療を長引かせないために自分でできること

6-1.予約を守る

装置の装着後は基本的に1~3ヶ月ごとの通院し、歯の動き具合のチェックや、必要に応じて装置の調整を行います。この調整が先延ばしになると、歯が動かない時期が長くなるなど治療の進行に影響を与えるため注意が必要です。次回の通院まで期間が空いてしまうため、つい予約日を忘れてしまいがちですが、やむを得ない場合を除いては、必ず予約を守るよう心がけましょう。

6-2.装置は歯科医の指示通りに装着する

ゴムの装着やマウスピースの着脱など、自身にその管理が任されている装置については、歯科医の指示に従い、装着時間を守ることが大切です。指定された時間より装着時間が短かったり、自己判断で装置を外したりすると、治療に遅れが生じるため注意しましょう。

6-3.虫歯・歯周病を予防する

矯正治療中に虫歯や歯周病になると、先にそちらの治療が優先されるため、その分だけ矯正治療にかかる期間が長引きます。装置の装着により、口内は通常時よりも不衛生になりがちなので、こまめなケアを心がけましょう。

6-4.「頬づえ」「爪咬み」などのクセを治す

頬づえや爪咬みなど、顔面や口の周囲に余計な力が加わるようなクセは、治療スピードを遅らせる要因になります。唇を噛んだり、舌を突き出したりするクセや、横向きで寝る習慣なども注意が必要です。

6-5.体の代謝を高める

歯の移動スピードには骨の代謝が深く関係しているため、普段の生活でも体の代謝を高める工夫を行いましょう。不規則な生活や暴飲暴食、睡眠不足などは代謝を低下させてしまうため、治療中は生活習慣や食生活にも気を配ることが大切です。

7.まとめ

今回ご紹介した治療法の効果には個人差があり、すべての人に同様の成果が得られるわけではありません。ただ少しでも治療の期間を短縮したい人は上記の内容を参考に、最寄りの矯正専門医院に相談してみましょう。

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