歯科矯正で一般的なのが、ワイヤーとブラケットという装置を使うワイヤー矯正です。
しかし、ワイヤー矯正は装置が目立ちやすいうえ、装置を取り外すことができないため、装置や歯に汚れが溜まり虫歯になりやすいという欠点があります。
・矯正中の虫歯の予防法
・虫歯になりにくいマウスピース矯正
について説明します。
目次
1.歯科矯正は虫歯になりやすい?
ワイヤーを使った歯科矯正は100年ほど前から始まり、症例も多く研究も進んでいます。様々な症例に対応できる矯正法として、一般的に広く行われています。
しかし、ワイヤー矯正は虫歯になりやすいのが欠点です。
通常、歯科矯正は1年~3年と長い期間かかります。
装置をつけっぱなしにするため、装置と歯の間に食べかすなどの汚れが溜まりやすくなってしまいます。
また、装置が邪魔をして歯磨きがしにくいので、虫歯になるリスクが高まります。
もちろん、矯正治療中は月に1度くらいのペースで定期的に通院するので、その時に装置や歯をきれいにできます。
しかし、家庭でのケアが十分でないと、虫歯ができてしまいます。
虫歯ができると、治療が優先されるため歯科矯正は中断になり、その分、歯科矯正の期間が長くなってしまいます。
2.歯科矯正で虫歯を予防するには
歯科矯正中に虫歯にならないように、歯科医院も対策をとっています。
定期的なメインテナンスで装置を清掃する他、歯磨きの指導などを行っています。
また、唾液を検査して、口の中が虫歯になりやすい状態にあるかを調べる歯科医院や虫歯になりにくい矯正方法を提案する歯科医院もあります。
歯科矯正中の主な虫歯対策について紹介しましょう。
2-1.口の中の虫歯菌を減らす
虫歯対策の基本は、しっかり歯を磨いて歯垢を落とすことです。
特に歯科矯正中は、食事後に必ず歯磨きをして、食べかすを残さないようにしましょう。
装置周りは通常の歯ブラシだけではなく、ブラシのヘッドが小さいタフトブラシや歯間ブラシなども使うと、上手に歯垢を落とすことができます。
また、染め出し剤を使って歯垢を赤く染めながら歯磨きすると、磨き方のコツをつかめます。
2-2.歯を強くする
フッ素が配合された歯磨き粉や洗口液を使うと、虫歯ができにくくなります。
フッ素には、歯を強くしたり、虫歯菌によって溶かされた歯の修復(再石灰化)を促進したりする効果があるからです。
さらに、虫歯菌の活動を抑える働きもあります。
フッ素が配合されている歯磨き粉や洗口液はドラッグストアやスーパーでも市販されているので、誰でも簡単に手に入ります。
ただし、年齢によって使用量の目安やフッ素濃度が異なるので、よく確認してから使いましょう。
2-3.食生活に気を付ける
虫歯を予防するには、食生活に気をつけることも大切です。
特に気を付けたいのはお菓子の間食です。
砂糖を多く含むアメや粘着性のあるガム、キャラメルは虫歯になるリスクを高めます。
また、お菓子や炭酸飲料、果汁ジュースなどをダラダラと口にするのも、よくありません。お菓子などの間食はできるだけ避け、食べたらすぐに歯を磨きましょう。
2.4歯科医院で定期的なケアを受ける
家庭での歯磨きケアでは落とせない汚れは、歯科医院で専用機器を使って落とします。
歯科矯正中は、1カ月に1回程度のペースで通院します。この時は、矯正の進み具合などをチェックしますが、歯や装置の清掃も大切です。
また、歯科医院でフッ素を歯に塗ってもらうこともできます。
2.5虫歯になりにくい矯正を考える
歯科矯正中の虫歯を防ぐには、ワイヤー矯正以外の矯正を選ぶのも選択肢の一つです。
マウスピース矯正の場合には、取り外して歯を磨くことができるので虫歯になるリスクを抑えることができます。
また、マウスピースの内側に少量のフッ素ジェルを塗ることもでき、虫歯に強い歯を目指せます。
3.マウスピース矯正とは
虫歯予防をしながら、歯科矯正ができるマウスピース矯正について説明しましょう。
マウスピース矯正とは、透明なマウスピース型の装置(アライナー)を歯に装着して行う歯科矯正のことです。
アライナーは矯正計画に沿って何種類も作成され、順番に装着していくことで少しずつ歯を動かしていきます。
アライナーは簡単に自分で取り外しができるので、装置を気にしない食事やしっかりと歯磨きができます。
このため、ワイヤー矯正に比べて、虫歯や歯周病になりにくいです。
4.マウスピース矯正のメリット
虫歯になりにくいだけでなく、マウスピース矯正は、ワイヤー矯正よりも優れた点があります。
マウスピース矯正の主なメリットを3つ紹介しましょう。
4-1. 透明で目立たない
マウスピース矯正で使うアライナーは、透明度の高いプラスチック製です。
そのため、装着していても周囲の人に気づかれにくいです。
人前に出ることが多く、ワイヤー矯正が難しいという方は、マウスピース矯正なら、理想の口元を実現できるでしょう。
4-2. 脱落しにくく痛みも少ない
ワイヤーを使った矯正治療では、装置の脱落が起きやすいです。
また、ブラケットやワイヤーなどの金属が舌や口の中を傷つけることもあります。
その点、マウスピース矯正で使うアライナーは、歯や歯茎にしっかりはまり、密着するので自然に脱落することはほとんどありません。
また、プラスチック製なので、口の中を傷つけることもありません。
4-3. 金属アレルギーの心配がな
ワイヤー矯正は通常、金属製のブラケットやワイヤーを使うため、金属アレルギーを発症してしまう人がいます。
このため、最近はセラミック製のブラケット、チタンやプラスチック製のワイヤーも使われるようになりました。
マウスピース矯正のアライナーは全く金属を使用していないので、アレルギーを心配する必要はありません。
5.マウスピース矯正のデメリット
マウスピース矯正には、次のようなデメリットもあります。
5-1. 自己管理が必要
マウスピース矯正のアライナーには種類があり、メーカーによって使用方法や装着時間などが異なります。
装着時間は1日20時間以上がほとんどです。
基本的には、食事と歯磨きの時以外は装着します。
そのため、装着し忘れは、矯正の進み具合に影響します。
自分でしっかりと装着し続ける意志が重要になります。
5-2. 食生活の改善が必要になる
マウスピースは歯にピッタリと密着して脱落しにくいですが、歯に歯垢がついたまま装着してしまうと、虫歯の原因になります。
ですから、食事や間食後は必ずしっかりと歯を磨かなくてはなりません。
5-3. 対応できない症例がある
マウスピース矯正の種類によっては、適応できる症例が異なります。
そのため、マウスピース矯正では対応出来る症例が限られています。
効果を見極めずに、強引にマウスピース矯正を行うと、何年続けても予定していた歯並びにならない、噛み合わせが悪くなってしまうなどのトラブルも生じかねません。
歯科矯正をする際は知識と経験が豊富な歯科医院を選びましょう。
まとめ
歯科矯正は、歯科医師に任せておけば自然と歯並びが良くなるのではなく、患者本人にも努力が求められる治療です。
歯のケアや食生活などに気をつけなければ、虫歯や歯周病になって矯正が中断してしまうことになります。
虫歯になりにくいマウスピース矯正に関心のある方は、まずマウスピース矯正可能かを歯科医師に相談しましょう。