矯正治療の方法は様々にありますが、今回はその中でも「インビザライン」についてご紹介します。
インビザラインは、「目立たない」「痛くない」「取り外せる」という三拍子が揃った画期的な矯正治療。歯にワイヤーを装着する矯正に抵抗を感じる方や、人前で喋ることが多い接客業などの仕事に従事している方には非常におすすめです。
一般的な費用相場や治療に要する期間についても解説しますので、どのような矯正を選べばいいのかまだ迷っているのなら、ぜひご参考ください。
目次
- (1)インビザラインとは?
- (2)一般のマウスピース矯正との違い
- (2-1)歯型の採取回数
- (2-2)マウスピースの精巧度
- (2-3)対応できる歯列の幅
- (3)インビザラインの主な特徴やメリット
- (3-1)目立たない
- (3-2)ほとんど痛みがない
- (3-3)自由に食事を楽しめる
- (3-4)金属アレルギーのリスクがない
- (3-5)通院が少なくてスケジュール調整が楽
- (3-6)虫歯や歯周病になりにくい
- (3-7)子どもの矯正治療にも対応可能
- (3-8)激しい運動をしてもケガの心配がない
- (4)インビザラインにデメリットはある?
- (4-1)口が渇きやすくなる可能性も
- (4-2)歯列の状態によっては対応できない
- (4-3)1日の装着時間が長い
- (4-4)治療期間がワイヤー矯正よりも長くなりがち
- (5)インビザラインの費用相場や治療期間
- (6)まとめ
(1)インビザラインとは?
20世紀末のアメリカで誕生したインビザラインは、いわゆる「マウスピース矯正」の一種で、従来のタイプが抱えてきた様々なデメリットを克服した画期的な治療方法として知られています。
このメソッドが世界に普及してから20年以上経ちましたが、現在では多くの矯正歯科医に支持され、600万人を超える豊富な症例数と治療実績を誇っています。
インビザラインの最大の特徴は、建築設計でも採用されている高性能作図システム「CAD(Computer Aided Design)」を用いて患者一人ひとりの歯列構造を分析・モデリングし、精巧なマウスピースを作成できるという点です。
またそれに加え、インビザライン矯正では世界中の症例データをフィードバックすることで様々な歯列の動きを精密に予測。矯正の開始から終わりまでに生じうる不確実な歯の動きをシミュレーションし、「3次元治療計画ソフトウェア」を通して理想の矯正状態に近づけていきます。
(2)一般のマウスピース矯正との違い
現在でもインビザラインが登場する以前の従来型のマウスピース矯正は存在しています。では、インビザラインと従来型のマウスピース矯正には、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
(2-1)歯型の採取回数
従来型のマウスピース矯正治療は、歯が動いていくたびに歯型を採取し直して、新たにマウスピースを作成する必要があります。
そのため数週間から1ヵ月の間隔で何度も通院しなければならず、その意味ではワイヤー矯正治療よりもスケジュール調整が面倒であるという側面がありました。
一方でCADの設計モデリングや3次元治療計画ソフトウェアを駆使するインビザラインは、治療の初めから終わりまでの過程を精密に予測してマウスピースを作成しますので、付け替えるたびにいちいち歯型を採取する必要がありません。
(2-2)マウスピースの精巧度
従来型のマウスピース矯正治療では、採取した歯型をもとに歯科技工士が手作業でマウスピースを作成しています。そのためマウスピースの精巧度には歯科医院によって異なるため、矯正効果にばらつきが生じてしまいます。
インビザラインは、経験や技術によって精度に違いが出てしまう「手作業」に頼っていた造形工程を、すべて精密なコンピューターシミュレーションシステムに置き換えていますので、どの歯科医院で行っても同じ程度の矯正治療効果を期待できます。
もちろん、従来型のマウスピース矯正であったとしても、長年の経験と実績を持つ歯科医師に任せることができれば安心です。しかしどの歯科医院がマウスピース矯正に定評があるのかを患者自身が判断することは非常に難しいといえるでしょう。
こうしたことから、確かな矯正治療効果を再現しやすいインビザラインの方が、歯科医院選びに迷いにくいという点でメリットがあります。
(2-3)対応できる歯列の幅
従来型のマウスピース矯正は、対応できる歯列には限界がありました。そのため、本当はマウスピース矯正を選択したかったのに、ワイヤー矯正を余儀なくされてしまう方も少なくないのです。
しかしインビザラインなら、以前まではマウスピースでは難しいとされていた歯列にも対応できるようになりました。「マウスピースでの矯正治療は難しい」と医師に言われたことのある方も、新しい選択肢として検討する価値があります。
(3)インビザラインの主な特徴やメリット
「どんな矯正治療が自分に合っているかわからない」という方は、ぜひ以下に挙げるインビザラインの特徴やメリットを参考にしてみてください。
(3-1)目立たない
インビザラインで使用するマウスピースの厚さは、なんと0.5ミリ。素材の透明度が高く自然な歯肉の色を再現するため、マウスピースを装着していることが周囲に知られにくいという特徴があります。
「マウスピースは“目立ちにくい”とはよく言われるけれど、それでも人前で堂々と笑えるか不安……」という方や、接客業に従事している方も、インビザラインなら安心して装着することができるでしょう。
(3-2)ほとんど痛みがない
ワイヤー矯正治療は、歯の表側や裏側に矯正器具を装着するため、器具が口内に当たったり、締め付けられたりして痛みを感じることがしばしばあります。
しかしインビザラインはマウスピースで歯列を徐々に動かして整えていく矯正治療方法ですので、痛みはほとんどありません。
(3-3)自由に食事を楽しめる
「食事中は矯正のことを忘れて楽しみたい……」という方には、インビザラインがおすすめです。
ワイヤー矯正は、一度装着すると任意で取り外すことができません。そのため矯正期間中は、器具に食べかすが挟まったり、ものを噛むことで位置がずれてしまったりするために、ある程度食事に注意を払う必要があります。
プライベートの外食や仕事での会食が多い方にとっては、矯正器具に左右されてしまうのは非常にストレスですよね。
インビザラインは自由に着脱可能ですので、「食事のときだけ外しておく」という柔軟な対応をすることができます。できる限り矯正器具を意識しないライフスタイルを求める方には、とてもぴったりの矯正治療方法だといえるでしょう。
(3-4)金属アレルギーのリスクがない
ワイヤー型の矯正器具を用いる際にしばしば懸念されるのが、金属アレルギーです。軽微なアレルギー症状を持っている方はあまり心配をすることはないのですが、重度の金属アレルギーともなると、ワイヤーの金属部分が口内のどこかに触れただけで反応を引き起こしてしまうことも……。
インビザラインは無害なプラスチック製ですので、アレルギーが心配の方は安心して治療に臨むことができます。
(3-5)通院が少なくてスケジュール調整が楽
先述したように、従来型のマウスピース矯正では、歯が動くたびに歯型を採取して新たにマウスピースをつくり直す必要がありました。
一方でインビザラインは、「仕事で忙しくてなかなか通院できない」という悩みを持つ方にもぴったりです。治療の初めから終わりまでの歯の動きをあらかじめシミュレーションしてマウスピースを作成しますので、短期間のうちに何度も歯科医院に足を運ぶ必要はありません。
(3-6)虫歯や歯周病になりにくい
矯正治療において「器具を長期間装着し続けることには、衛生面で抵抗がある」と考える患者も少なくありません。確かにワイヤー矯正は、治療中取り外すことができないために、食べかすが詰まってしまうトラブルもしばしば起こってしまいます。
たとえ毎日入念にブラッシングをしていても、完璧に汚れの除去はできないというのが現実です。そのため人によっては、ワイヤー矯正治療中に虫歯や歯周病になってしまうことも……。
万が一虫歯や歯周病になってしまった場合は、矯正を中断して治療に専念しなければなりません。器具を外している間は矯正効果が落ちてしまいますので、せっかく移動していた歯が、元の位置に戻ってしまう可能性も考えられます。
しかし取り外しが自由のインビザラインは、ワイヤー矯正治療に比べると、衛生や虫歯・歯周病のリスクの点で非常にメリットがあります。基本的に食事の際はマウスピースを外す決まりになっていますし、就寝前は水で綺麗に汚れを洗い落とせば清潔を保てます。
(3-7)子どもの矯正治療にも対応可能
現在は技術水準の向上により、永久歯が生え揃っていないうちにインビザラインを装着することができるようになりました。
「子どもがワイヤー矯正器具の装着を嫌がる」「やんちゃな年頃だから口をぶつけてケガをしないか心配」「思春期の娘にワイヤーを付けるのはちょっと可哀想……」
このような点で子どもの歯列矯正に懸念をお持ちなら、ぜひインビザラインを試してみてはいかがでしょうか。
(3-8)激しい運動をしてもケガの心配がない
普段からスポーツに親しんでいる方にとっては、ワイヤー矯正の装着に対してかなりの不安を抱くはずです。格闘技や球技で口元に衝撃が加わると口内を傷つけてしまい、最悪の場合は大けがを負ってしまう可能性も否定できません。
安心してスポーツを楽しみたいなら、マウスピースのインビザラインがおすすめです。衝撃に強いため、万が一口元をぶつけても大丈夫。習い事で野球やサッカーをしている子どもの矯正装置としても非常に優秀です。
(4)インビザラインにデメリットはある?
従来型のマウスピース矯正の欠点を克服したインビザラインですが、この矯正治療方法を選択する際には、いくつか注意しなければならない点があります。
(4-1)口が渇きやすくなる可能性も
インビザラインでの矯正治療中、しばしば「口が渇きやすくなった」と訴える患者がいらっしゃいます。実はそれは、インビザラインが直接の原因になっているのではなく、「口呼吸」の習慣が関わっているのです。
インビザラインを装着すると、多少なりとも口が閉じにくくなってしまいます。普段から鼻呼吸ができている人にとってはそこまで支障はないのですが、口呼吸になりやすい人の場合、無意識に口を開けて呼吸する機会が増えてしまう可能性があります。
特に、インビザラインを装着して睡眠している間は要注意です。もともと口呼吸の人は、睡眠中に口を開きっぱなしにしていることが多いため、マウスピースによって余計に口が閉じにくくなってしまい、口内の乾燥が加速する恐れがあります。
風邪を引きやすくなる、口臭が気になる、虫歯や歯周病になりやすくなるなど……口が渇いた状態(ドライマウス)を放置していると、様々な口内トラブルを引き起こしてしまいます。インビザラインを行う際は、鼻呼吸を常に意識して生活するようにしましょう。
(4-2)歯列の状態によっては対応できない
従来型のマウスピース矯正に比べて、インビザラインの対応可能な歯列は確かに増えています。しかしそれでも、改善が必要な歯列のなかでも“重度”の症例は、インビザラインでも難しいと判断されることがあります。
インビザラインでも対応が難しい症例 | |
重度の叢生(そうせい) | 「乱杭歯(らんくいば)」「八重歯(やえば)」などの、いわゆる“デコボコ”な状態の歯列を「叢生(そうせい)」といいますが、重度のケースでは歯を正常な位置に戻すための十分なスペースが不足しているため、インビザラインで対応することができません。 |
重度の上顎前突(じょうがくぜんとつ) | 前歯が飛び出している「出っ歯」の状態です。マウスピースでの歯列矯正で改善できる余地はありますが、骨格そのものに原因が見出される場合は、対応することが難しいとされています。 |
重度の受け口 | 下側の前歯が上側の前歯よりも飛び出している、いわゆる“しゃくれた”状態のことを受け口といいます。こちらもまた、あご骨の発達異常によるケースがしばしばありますので、マウスピース矯正ではなくて外科矯正が必要です。 |
(4-3)1日の装着時間が長い
これまで紹介してきたように、インビザラインには「マウスピースの着脱が自由」というメリットがあります。
しかしそうはいっても、十分に矯正効果を発揮するためには、インビザラインを最低でも1日20時間以上装着し続けなければなりません。
確かに取り外しは自由なのですが、推奨されている装着時間のことを考慮すれば、実はそこまで自由ではないという事実をここで強調しておかなければならないでしょう。
あまりに頻繁にインビザラインを外していると、想定していたよりも矯正のかかりが芳しくなく、矯正期間が延びてしまう可能性もあります。「楽だから」という理由で必要以上に取り外すことがないように、くれぐれも注意が必要です。
(4-4)治療期間がワイヤー矯正よりも長くなりがち
ワイヤー矯正では、締め付け具合を調整しながら歯列を正しい位置へと導いていきます。慣れないうちは多少の痛みを感じることがありますが、例えば歯の表側に器具を装着するワイヤー矯正の場合は、一定の間隔で歯に力を加え続けるため、短期間で矯正治療を終えることが可能です。
一方でインビザラインはどうでしょうか。結論からいえば、歯が動くたびにマウスピースを付け替えて歯列を整えていくこの矯正方法は、ワイヤー矯正よりも治療期間が長くなりがちです。1個のマウスピースで動かせる歯の幅には限界があるため、どうしても時間がかかってしまうのです。
とはいえ、インビザラインには「目立たない」「痛みがほとんどない」という欠点を補って余りあるメリットがありますので、治療期間の長さについては、そこまでネックなポイントにはならないといえるでしょう。
(5)インビザラインの費用相場や治療期間
費用相場 | 70~100万円
(歯科医院の設定する検査料や保定装置料によってばらつきがあります) |
治療期間 | 2年~3年 |
(6)まとめ
インビザラインは、従来型のマウスピース矯正が抱えていた欠点を克服した発展型の治療方法です。
メリット | ・自由に食事を楽しめる
・金属アレルギーのリスクがない ・通院回数が少ない ・虫歯や歯周病になりにくい ・子どもの矯正治療にも対応可能 ・激しい運動をしてもケガの心配がない |
デメリット | ・口呼吸の人は注意が必要
・歯列の状態によっては対応できない ・1日の装着時間が長い ・治療期間がワイヤー矯正よりも長くなりがち |
費用相場 | 70~100万円 |
治療期間 | 2年~3年 |
対応が難しいとされる症例 | ・重度の叢生
・重度の上顎前突 ・重度の受け口 |
どのような矯正を選べばいいのか迷っているのなら、今回の記事を参考にしながら、インビザラインを選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。