「子どもの歯並びが気になる」そういう心配をされている親御さんの中には、矯正治療を受けさせようとお考えの方も多いのではないでしょうか。一般的に「小児矯正治療」というと、第1期と第2期があり、あごを拡げる床矯正装置やワイヤー矯正装置を使うもの、とのイメージをお持ちの方は多いかもしれません。
しかし、そういった従来の矯正装置を使って悪くなってしまった歯並びを矯正するのではなく、歯並びが悪くなるのを予防するために行う歯列矯正治療方法があるのです。
それが、「マイオブレース小児矯正」です。
マイオブレース小児矯正とは、どのような治療方法なのでしょうか。
目次
- 1 マイオブレース(Myobrace)小児矯正とは
- 1-1: マイオブレース小児矯正の特徴
- 1-2: こんな様子が見られたら要注意
- 1-3: 従来の小児矯正治療との違いとは
- 1-4: マイオブレース小児矯正に適齢期はある?
- 2 マイオブレース小児矯正における治療の進め方
- 2-1: 専用のマウスピースを装着
- 2-2: マイオブレースアクティビティを行う
- 2-3: 治療のゴールは?
- 3 マイオブレース小児矯正のメリット
- 3-1: 痛みがほとんどない
- 3-2: 見た目が気にならない
- 3-3: 後戻りがほとんどない
- 3-4: 副次的効果もある
- 4 マイオブレース小児矯正の治療期間と費用
- 4-1: マイオブレース矯正の治療期間・通院頻度
- 4-2: マイオブレース治療の費用はどれくらいかかる?
1 マイオブレース(Myobrace)小児矯正とは
日本では、子どもの4人に3人、もしくは5人に4人が歯列不正やあごの発育不良の問題を抱えていると言われています。その原因は、口が開いたまま呼吸をしてしまう口呼吸にあることが近年わかってきました。その口呼吸を矯正できる装置がマイオブレースと呼ばれる矯正装置なのです。
1-1: マイオブレース小児矯正の特徴
マイオブレース小児矯正とは、歯並びを悪くする根本的原因にはたらきかけ、顎の成長を利用しながらよい歯並びにする矯正治療です。
あごの発育不良を抱える子どもは、口呼吸になったりものの飲み込み方に問題があります。それには、ほおや舌、唇など口のまわりの筋肉の使い方が関係していることがわかってきました。マイオブレース小児矯正では、専用のマウスピースを使い、口周りのトレーニングを行い筋機能を高めることで、あごの正しい発育を促し、歯並びを自然に整えます。つまり、マイオブレース小児矯正は、歯並びが悪くなる前に予防的に治療をする「早期予防矯正治療」なのです。
1-2: こんな様子が見られたら要注意
子どもにこのような様子が見られた場合は口周りの筋機能に問題がある可能性があります。マイオブレース小児矯正で改善できる可能性がありますので、一度小児矯正歯科で相談されることをおすすめします。
- 気がついたらいつも口がぽかんとあいている
- 就寝中にいびきをかく
- 鼻づまりのため口呼吸になっている
- ものを飲み込むときにあごや口の周りにしわができる
- しゃべるときに舌が出る
- 食べ物を食べるときにくちゃくちゃ音を立てる
- 口の中に食べ物を入れたままもぐもぐしていてなかなか飲み込めない
1-3: 従来の小児矯正治療との違いとは
今までの小児矯正治療は、歯並びが悪くなった後に歯並びをキレイにするための治療という位置づけでした。そのため、一度矯正治療をして歯並びがキレイになっても、口周りの癖が改善されずに後戻りするケースもあります。
マイオブレース小児矯正は、口周りの筋機能を高めて歯並びを悪くする原因を改善することで歯並びを自然なかたちで整えていくものです。したがって、歯並びが悪くなる前に、もしくは歯並びが悪くなってから歯並びを悪くする原因を取り除いて歯並びを整えるための治療と言えるでしょう。
1-4: マイオブレース小児矯正に適齢期はある?
マイオブレースのオフィシャルサイトによれば、マイオブレース小児矯正の治療対象年齢は3歳~15歳となっています。しかし、親や医師が伝えたことを理解できて、なおかつ乳歯と永久歯が混在しており、あごの成長が利用できる年齢が最適であると考えると、5~8歳までが最適齢期であると言えます。
ただし、9歳を過ぎてもあごの発育状態によってマイオブレースが適用できる場合も少なくありませんので、一度担当医に相談してみることをおすすめします。
2 マイオブレース小児矯正における治療の進め方
マイオブレース小児矯正治療では、マウスピースの装着とお口のとトレーニングの2本立てで治療を進めていきます。
2-1: 専用のマウスピースを装着
マイオブレース治療ではワイヤーやブラケットを使わず、基本的にマウスピースのみを使用します。抜歯もしません。マウスピースを装着するのは、専用のマウスピースを日中1~2時間、就寝中の2回だけです。登下校時など、外出するときは基本的に装着する必要はないので、まわりに矯正治療中であることを知られることはほとんどありません。
2-2: マイオブレースアクティビティを行う
また、お口周りの筋機能を高めるトレーニング「マイオブレースアクティビティ」を毎日することが必要です。このトレーニングは、呼吸を口呼吸から鼻呼吸に、舌を正しい位置に、正しい飲み込み方にするために行う唇や頬のエクササイズです。パソコンやスマートフォンで専用のアプリをダウンロードして、画面を見ながら毎日3~5分程度トレーニングを行います。
また、月に1回は歯科医院でもトレーニングを行うとともに、治療の進み具合をチェックします。
2-3: 治療のゴールは?
マイオブレース治療では、以下の状態になるのが理想です。この理想の姿を目指して治療を進めます。
- 会話するときを除いて、お口がいつも閉じている
- 鼻呼吸ができている
- 舌が安定した位置(上あご)にある
- ものを飲み込むときに舌が動かない
- 保定(リテーナー)がいらない
3 マイオブレース小児矯正のメリット
マイオブレース治療には次の4つのメリットがあります。
3-1: 痛みがほとんどない
マウスピースはやわらかいシリコン素材でできているので、つけているときの痛みはほとんどありません。また、ワイヤー矯正では装置を調整したあとに痛みを生じがちですが、その心配もありません。
3-2: 見た目が気にならない
日中にもマウスピースをつける必要はあるものの、つけている時間は1~2時間程度です。そのため、家でつけていれば「学校で装置をつけているのがばれてからかわれる」といった心配はありません。また、取り外しも自由にできるので、食事どきにも気にせず、食事を楽しむことができます。
3-3: 後戻りがほとんどない
一般的な矯正治療では外から無理やり力を加えて歯を動かすだけであり、口周りの癖はそのままです。そのため、後戻りを防ぐためにはリテーナーと呼ばれる保定装置が欠かせません。一方、マイオブレース治療は口腔習癖を根本から改善するので口周りの筋肉が正しい歯の位置を保持します。そのため後戻りが起きにくく、リテーナーも必要ないのです。
3-4: 副次的効果もある
マイオブレース治療には、歯並びの改善以外に副次的な効果も期待できます。たとえば、歯並びが改善することにより顔つき・姿勢がよくなった例や、鼻呼吸ができるようになり鼻詰まりやいびきが改善したケースも見られます。また、鼻呼吸ができるようになると鼻の中にあるフィルターで外からの菌やウイルスをある程度シャットアウトできるようになるので、免疫力が向上して風邪やインフルエンザ、アトピー性皮膚炎、喘息などにかかるリスクも軽減します。
4 マイオブレース小児矯正の治療期間と費用
最後に、マイオブレース小児矯正治療の治療期間と費用について解説します。
マイオブレース治療も、ほかの矯正治療と同じく原則として自費診療になるのですが、どれくらいの治療期間、費用がかかるものなのでしょうか。
4-1: マイオブレース矯正の治療期間・通院頻度
マイオブレース小児矯正の標準的な治療期間はおよそ2年です。しかし、これはあくまでもマウスピースを日中1~2時間と就寝中につけていて、なおかつアクティビティを毎日行っていた場合です。これらが毎日できていなければ、治療期間が延びる可能性もあります。
通院は月に1回が基本ですが、お子さんの年齢やお口の中の状況をみながらトレーニングの内容や器具の種類を変えることもあるので、通院回数が多くなることもあります。
4-2: マイオブレース治療の費用はどれくらいかかる?
マイオブレース治療にかかる費用は、およそ30万円~60万円前後です。オプションでほかのプログラムを追加する場合は追加費用がかかることもあります。従来の小児矯正治療では、第1期・第2期とも治療費用はだいたい30万円~50万円なので、トータルで60万円~100万円くらいかかります。そのため、マイオブレース治療を受けるほうが割安になるかもしれません。
お支払いについては現金のほか、各種クレジットカード決済やデンタルローンなどが使えることも多いので、費用について心配のある方は受付で相談してみるとよいでしょう。
マイオブレース治療はまだ認知度が低く、治療を受けられる歯科医院は日本ではまだ少数です。しかし、早めにマイオブレース治療を開始すれば、ワイヤーやブラケットをつける治療をしなくてもすむようになります。お子さんの歯並びが気になっていて、なおかつマイオブレース治療を検討される際は、マイオブレース治療を扱っている歯科医院で一度相談するようにしましょう。