今回は「出っ歯」をできるだけ低価格・短期間で治したいという方へ、その具体的な方法や費用、治療期間についてご紹介していきます。
「出っ歯」を治す方法は大きくわけて2つ、矯正治療による方法と被せ物による方法があります。各治療法の費用相場や期間、さらに治療によるメリット・デメリットを詳しくご紹介しますので、ぜひ今後の治療の参考にしてください。
目次
- 1.出っ歯を「矯正治療」で治す
- 1-1.「部分矯正」で治すか「全体矯正」で治すか
- 1-1-1.スピーディーで低価格な「部分矯正」
- 1-1-2「部分矯正」ができる人・できない人
- 1-1-3.お口全体のバランスを考えるなら「全体矯正」がおすすめ
- 1-2出っ歯を治す矯正治療の種類
- 1-2-1.ワイヤー矯正(表側矯正):期間〇 費用◎
- 1-2-2.リンガル(裏側)矯正:期間〇 費用〇
- 1-2-3.マウスピース矯正:期間〇 費用〇
- 1-2-4.インプラント矯正:期間◎ 費用△
- 2.出っ歯を「被せ物」で治す
- 2-1治療期間は数カ月!費用も矯正より低価格
- 2-2.出っ歯を治すセラミック治療の種類
- 2-2-1.オールセラミック:期間〇 費用△
- 2-2-2.メタルボンド:期間〇 費用〇
- 2-2-3.ラミネートべニア:期間◎ 費用◎
- 2-3.長い目でみるとデメリットが大きいので要注意
- 3.骨格に問題がある場合は「外科治療」が必要なことも
- 4.まとめ
1.出っ歯を「矯正治療」で治す
1-1.「部分矯正」で治すか「全体矯正」で治すか
出っ歯を矯正治療で治す場合、まずは「部分矯正」と「全体矯正」のいずれかの治療法を選択します。
「部分矯正」は前歯の気になる部分のみを対象にした矯正治療で、矯正器具も基本的には前歯のみの装となります。「全体矯正」は前歯を含めたお口全体の矯正治療で、矯正器具もすべての歯に装着し、歯並びと同時に噛み合わせの改善を図っていきます。
使用する矯正器具については、いずれも次項の「矯正治療の種類」でご紹介する装置から選ぶことができます。
1-1-1.スピーディーで低価格な「部分矯正」
低価格・短期間のみに注目するなら、治療範囲の狭い(出っ歯のみを治す)部分矯正のほうが費用も安く、治療期間も短縮できます。費用の相場は全体矯正の1/6~1/2程度、治療期間は早くて数カ月、長くても1年未満で治療が終了します(全体矯正では2~3年)。
1-1-2「部分矯正」ができる人・できない人
部分矯正は前歯の歯並びのみに問題があり、奥歯の歯並びや噛み合わせには異常がないケースを対象とした治療法となります。奥歯の噛み合わせが悪い、あるいは出っ歯以外にも歯並びに問題のあるケースは部分矯正の対象外となるため注意しましょう。
また部分矯正では前歯の一部をわずかに削って、歯を並べるためにスペースを確保していきます。これは「ディスキング」と呼ばれる処置で、隣の歯と接する面を最大で0.25mm程度(1本あたり0.5mm程度)削り、そのスペースを利用して歯を内側へと引き寄せていきます。部分矯正では基本的にスペース確保のための抜歯は行わないため、ディスキングによるスペースのみでは改善できない出っ歯については全体矯正の対象となります。
1-1-3.顔貌全体のバランスを考えるなら「全体矯正」がおすすめ
部分矯正は主に審美面(見た目)を重視した矯正治療で、比較的軽い出っ歯の人向けの治療法といえます。お口全体の歯並びや噛み合わせ、さらに顔貌のバランスまでを考えるなら、多少の費用や期間を要しても全体矯正のほうがおすすめです。
1-2出っ歯を治す矯正治療の種類
1-2-1.ワイヤー矯正(表側矯正):期間〇 費用◎
ワイヤー矯正(表側矯正)は数ある矯正治療法の中で最もオーソドックスな治療法で、あらゆる歯並びに対応できます。デメリットとしては治療中に矯正器具が目立ちやすいこと、また器具による違和感や痛みなどが生じやすいことなどが挙げられます。
費用の相場は全体矯正で70~100万円程度、部分矯正では10~50万円程度で、他の矯正治療と比べると比較的安く費用が抑えられます。ただしセラミックブラケットなど“目立ちにくい矯正器具”を使用する場合はもう少し費用が高くなります。治療期間は全体矯正で2~3年、部分矯正で3ヶ月~1年程度が目安です。
1-2-2.リンガル(裏側)矯正:期間〇 費用△
従来の治療ではブラケットとワイヤーを歯の表側に装着するのに対し、裏側矯正では装置のすべてを歯の裏側に装着していきます。どの歯並びにも対応でき、さらに治療中も装置が目立たず人目に触れにくいため、治療中の“見た目”が気になる人におすすめの治療法です。ただし費用は他の治療法と比べ高額になります。
費用の相場は全体矯正で100万~150万円程度、部分矯正で30万~50万円程度で、治療期間はワイヤー矯正(表側矯正)と変わりません。
1-2-3.マウスピース矯正:期間〇 費用△
取り外しができるマウスピースを使って歯並びを治す治療法です。薄くて透明なマウスピースは装着しても目立たず、違和感も少ないほか、食事や歯磨きの際に外せることなどが注目され、近年急速に人気を集めています。一方で治療できる症例が限られるため、歯並びの状態によっては他の治療法を勧められる場合があります。
費用の相場は全体矯正で70万~100万円程度、部分矯正で20万~40万円程度で、ワイヤー矯正(表側矯正)と裏側矯正の中間ぐらいとなります。治療期間は全体矯正で1~3年、部分矯正で6カ月~1年が目安です。
1-2-4.インプラント矯正:期間◎ 費用〇
歯のない部分に入れるインプラントとは異なり、矯正治療用のインプラントスクリュー(ネジ)を顎の骨に埋め込み、そこを固定源に歯を動かしていく治療法です。インプラント矯正のメリットは治療期間が大幅に短縮できる点で、従来よりも半年から1年ほど早く治療が終了できます。また抜歯なしで治療ができるケースが増える点もメリットです。一方で費用は通常のワイヤー矯正よりもやや高額になるほか、スクリューを埋め込む手術が必要になります。
費用の相場は、従来の矯正治療の費用にスクリュー代(1本2万~5万円×本数)を足した価格となります。治療期間は全体矯正で1~2年、部分矯正で1年未満です。
2.出っ歯を「被せ物」で治す
2-1治療期間は数カ月!費用も矯正より安く抑えられるケースも
出っ歯には上あごの大きさや位置などに問題がある「骨格性タイプ」と、骨格的な問題はなく前歯の並びや大きさに問題がある「歯性タイプ」の大きく2つのタイプがあります。骨格性タイプの出っ歯は基本的に上記の矯正治療が第一選択となりますが、歯性タイプの出っ歯についてはセラミックによる被せ物の治療で改善できるケースもあります。また被せ物の治療では歯並びにくわえ、歯の形や大きさ、色調なども改善が可能です(歯の色については、矯正治療でもホワイトニングを併用すれば可能)。
被せ物を使った治療は矯正治療よりも短期間で、早くて数カ月、長いケースでも半年程度で治療が終了します。費用は材質によって異なりますがおよそ30万円から90万円の間ぐらいで、ケースによっては矯正治療よりも安く抑えられます。
2-2.出っ歯を治すセラミック治療の種類
2-2-1.オールセラミック:期間〇 費用△
セラミックのみを使用した被せ物で、天然歯に近い色調や透明感が再現できます。金属を一切使用しないため見た目も自然で、アレルギーの心配もありません。費用の相場は1本あたり10万~18万円程度で、他の被せ物の中では最も高くなります。
2-2-2.メタルボンド:期間〇 費用〇
表側をセラミック、裏側を金属で補強した被せ物です。金属を使用しているためオールセラミックに比べると透明感や質感に劣るほか、金属アレルギーのある人には使用できません。ただ費用はオールセラミックよりも安価で、1本あたり7万~10万円程度となります。
2-2-3.ラミネートべニア:期間◎ 費用◎
歯の表面を薄く削り、そこにセラミックチップを“つけ爪”のように貼りつける治療法です。被せ物ほど大きく削る必要がなく、歯への負担が軽減できます。ただし削る量が限られるため、症状の重いケースには向いていません。費用相場は1本当たり5万~10万、また治療期間も2~3ヶ月程度と、被せ物で治療するよりも低価格・短期間で治療できます。
2-3.長い目でみるとデメリットが大きいので要注意
セラミックによる被せ物の治療は矯正治療よりも短期間に治せるのがメリットの一方で、「自身の歯を削る」というリスクをともないます。歯は一度削ると元の状態に戻せないばかりか、削ることによる歯へのダメージも大きくなるため注意が必要です。美しい状態を長く維持するという点を考えると、多少の時間はかかっても矯正治療で改善するほうが賢明でしょう。
3.骨格に大きな問題のあるケースは「外科治療」が必要
上記でも挙げた「骨格性の出っ歯(上あごの大きさや位置に問題のあるタイプ)」の中には、矯正治療や被せ物などによる治療でも歯並びが改善できないケースがあります。具体的には上あごが下あごよりも大きく前方に突き出ているようなケースです。このようなケースは、あごの骨の一部を削る「外科手術」が必要となります。
ただこのような骨格に大きな問題を抱えるケースでは、所定の手術と矯正治療を受けることで費用に保険が適用できる場合があります。詳しくは最寄りの矯正歯科医院でご相談ください。
4.まとめ
出っ歯の治療では、骨格的な問題がなく比較的軽いケースであれば数か月~2年、費用も10~50万円程度で治すことができます。また骨格的な問題があり矯正治療が必要なケースでも、治療法によっては2年以内に治せるものもあります。ただし矯正治療については、スピードや治療中の見た目(目立たない治療)を重視するほど費用は高くなります。治療をはじめるにあたっては、治療のどこにポイントを置くか(費用・期間・見た目・精度など)をしっかり考慮したうえで、方法を選択していきましょう。