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大人もできる?抜歯をしない矯正治療|抜歯・非抜歯の違いを紹介

歯並びを整えるために矯正治療を始めるとき、抜歯が気になる人は多いでしょう。大人は骨が完全に成長しており、歯を並べるための隙間を作るために抜歯をするのが一般的です。一方で、症例によっては歯を抜かずに治療できる場合があります。この記事では、矯正治療における抜歯と非抜歯の違いや、抜歯に適した症例、非抜歯矯正の方法、それぞれのメリット・デメリットなどを詳しく解説します。

1  矯正治療で抜歯が必要なケースとは?

歯並びを整えるための矯正治療の症例は、出っ歯、すきっ歯、受け口、叢生などさまざまです。

一般的には抜歯が必要かどうかは、症例やその程度によって異なります。

 

矯正治療がしたくても虫歯になっていない健康な歯を抜くことは誰しも怖いものです。

そのため「できるだけ、歯を残して治療する」のは、どの歯科医院でも大切にしている考え方でしょう。

ですが、せっかく矯正治療をしたのに、理想とする歯並びにならなかったり、不自然な顔つきになったりするのは、患者さんのためになりません。

 

そこで、事前にしっかりと話し合いをすることが何よりも大切です。

前もって抜歯と非抜歯の知識を得ることで、相談がスムーズにできるでしょう。

まずは、抜歯が必要なケースについて説明します。

1-1 矯正治療で抜歯が必要になりやすいケース

同じ症例でも複数の治療方法があり、患者さんの選択肢はさまざまです。

歯並びが凸凹している場合は、一般的に小臼歯を抜いて整える場合が多いでしょう。

 

顎の大きさは成長がとまってしまった大人では変えることはできません。

そのため、限られた場所を歯で取り合うことになり、結果として歯が凸凹になるのです。

抜歯になるのは、歯を美しく整えるためのスペースが少ないためですが、具体的には以下のようなケースが考えられます。

 

・顎の骨が歯の大きさに対して小さすぎる

・上顎と下顎の骨の大きさがアンバランス

・口が出っ張り閉じにくい

 

いずれも、成長期の子どもであれば、顎の骨にまで治療はおよびますが、大人になってからでは困難です。

骨の形や大きさを変えられないために、抜歯は必要とされます。

1-2 抜歯する矯正治療になりやすい歯並び

抜歯するケースになりやすいのは、以下のような歯並びです。

 

・極端な出っ歯

極端な出っ歯では、前歯を大きく後ろ側に動かす必要があるため、抜歯をしてスペースを作ります。

 

・極端な受け口

受け口がひどい場合は、傾いている前歯を骨に対してまっすぐにするためのスペースを作る必要があり、抜歯します。

 

・口元全体が前に出っ張っている

上下の顎と歯が前に出っ張っていると、横顔のシルエットが気になるものです。

このときは、全体的に歯を内側に引っ込める必要があるので、抜歯してスペースを作ります。

 

・極端な叢生

歯が凸凹になり、重なり合っている場合はスペースが足りないことが原因なので、歯を抜いてスペースを確保します。

1-3 どの歯を抜歯するのか?

歯並びが整えるのと同時に矯正治療では、きちんと嚙み合わせることが重要です。

そのため、歯を噛み合わせたときに比較的影響が少ない中央から4番目か5番目の小臼歯を選びます。

小臼歯は大臼歯と前歯の間にあるので、歯を動かせる距離が短いというのもメリットのひとつです。

 

また、親知らずが斜めに生えていたり、矯正治療の妨げになったりする場合は、親知らずを抜くことがあります。

ただ、「矯正で抜歯する」というとき、親知らずの抜歯を含まないのが一般的です。

どの歯を抜くか、何本抜くかは個々の症例で異なりますので、納得できるまで相談することが大切です。

2  抜歯をしない矯正治療とは?

すきっ歯などで空隙が元々ある場合は、そのスペースを使って歯を抜かずに矯正治療ができるケースは従来からありました。

ほかに非抜歯で矯正治療できる可能性が高いのは、歯並びの乱れや凹凸が小さい場合です。

非抜歯による矯正治療の方法を見ていきましょう。

2-1 奥歯を後ろに移動

大臼歯の後ろの骨に余裕があれば、奥歯を後ろにずらしてスペースを作れます。

ほかの歯も順番に移動させて歯並びを整えることが可能です。

この方法では、大臼歯の後ろのスペースを確保するために親知らずを抜歯するケースが多く、マウスピース矯正が適しています。

2-2 歯の側面を削る

歯並びの乱れが抜歯をするほどではなく、前歯が少しだけ大きい程度であれば、何本かの前歯の両側の表面のみを削る「ストリッピング」を行ないます。

削るのは0.2~0.6mmで、エナメル質の厚みの半分ほどなので、知覚過敏や虫歯になることはありません。

抜歯ほど大きなスペースを作れるわけではないので、重度の症例には活用できない方法です。

2-3 顎(歯列)を拡大

抜歯した場合、歯列の並びは面積の小さい「V字型」に、非抜歯の方法を選ぶと面積が大きな「U字型」にできる可能性があります。

ですが、大人の成長してしまった顎をどのくらい広げられるかは、顎の大きさなどによって違いがあります。

上顎は比較的拡大しやすいものの、下顎の拡大の適用はむつかしいとされています。

2-4 新しい矯正治療を試みる

「インプラント矯正」や外科的処置を伴う「コルチコトミー」を行なえば、ブラケットとワイヤーを用いる矯正で抜歯をせずにすむケースがあります。

 

・インプラント矯正

インプラント矯正は、アンカースクリューというネジを骨に埋め込み、歯を動かすときの土台にします。

今まで困難とされてきた臼歯を後ろに動かせることから、抜歯をしない矯正治療が可能です。

 

・コルチコトミー

コルチコトミーは歯を支えている歯槽骨の表側にある硬い皮質骨の一部を切除する外科的な施術です。

歯を移動させる範囲を拡大し、さらに移動するときの抵抗を小さくすることができます。

歯槽骨の基底部分を拡大できたり、縮小させたりできるので、歯を水平、垂直どちらにでも動かせます。

3 抜歯をする矯正治療のメリット・デメリット

抜歯をしない矯正治療も選択できるようになりましたが、主流はやはり抜歯をする矯正だといえます。

歯科医師への相談は、抜歯・非抜歯だけでなく、噛み合わせやお顔全体のバランス、口元の見た目、治療期間などについて希望を明確にしてからがよいでしょう。

3-1 抜歯をする矯正治療のメリット

抜歯をする一番大きなメリットは、確実に歯を移動させるスペースを確保できることです。

スペース確保は治療計画が立てやすくなるというメリットにもつながります。

3-2 抜歯をする矯正治療のデメリット

・抜歯後に痛みや腫れが生じる可能性がある

抜歯後、2~3日間は腫れや痛みが生じることがあります。

骨に埋まっている親知らずを抜歯するときは、痛みや腫れが長く続くこともありますが、小臼歯の場合はそれほど長引かないのが一般的です。

 

抜歯後の注意事項は、処方された薬を飲むこと、頻繁なうがいを避けること、飲酒を控えること、長い間湯船につからないこと、激しい運動はやめることなどです。

 

・矯正の治療期間が長くなる可能性がある

抜歯後、歯肉や骨が陥没している部分が修復されるのに時間がかかります。

スペースが広いために、歯を大きく動かすために治療期間が長引く可能性もあります。

人によって骨の硬さが異なりますので、歯の移動ペースはさまざまですし、無理な力をかければ歯や骨にダメージがあります。

この点をよくご理解いただければ、矯正治療に積極的に取り組めるのではないでしょうか。

4  無理に抜歯しない矯正治療を行なった場合のリスク

抜歯しない矯正治療の一番のメリットは、虫歯のない健康な歯を抜くことへの抵抗感がないことでしょう。

小臼歯は抜いても影響が少ないとはいえ、噛み合わせを安定させる役割を担っています。

抜歯に伴う時間と費用を節約できるのもメリットです。

 

一方で、抜歯をしない矯正はどんなケースにも適用できるわけではありません。

歯を動かせるスペースが少ないにも関わらず無理に抜歯しない矯正を選んだ場合などで、起こりうるリスクについて説明します。

4-1 口元が出っ張った感じになる

無理な非抜歯矯正によって、口元が出っ張った感じになることがあります。

美しいとされる横顔は、鼻と顎の先を結んだ線上の内側に唇が収まっている状態です。

スペースが確保できずに歯を並べると、前歯の出っ張りによって美しい横顔のラインをキープできなくなる可能性があります。

慎重にシミュレーションをすることが重要です。

4-2 歯肉が退縮する

少ないスペースしかないのに矯正治療をしたときに起きる問題のひとつが、歯が外側に倒れるように並ぶことです。

倒れた歯が埋まっている骨の位置を超えると、歯肉が退縮して歯ぐきの位置が下がって見えます。

歯が長く見えたり、歯と歯の隙間が広くなったりといった見た目だけの問題ではなく、虫歯や知覚過敏、歯周病のリスクが高まります。

4-3 歯並びが後戻りしやすい

どのような矯正治療でも後戻りは起きるので保定装置の装着が必要です。

非抜歯矯正の場合は抜歯をする矯正よりも後戻りが起きやすいとされています。

ただし、抜歯しない矯正に適した症例では、逆に抜歯する矯正よりも歯が動く距離が短いことで、後戻りは起きにくくなります。

まとめ 矯正治療の選択肢から適切な方法を選ぶ

矯正治療で抜歯をするかしないかを決めることは、最初の大きな関門かもしれません。

歯を抜くのがイヤだから、という理由だけで無理な非抜歯矯正治療を行なうとリスクがあります。

一方で非抜歯に適した症例では、時間や費用の節約ができたり、後戻りしにくかったりといった大きなメリットが得られます。

抜歯をするかしないかを選ぶために、この記事を参考にしてみてくださいね。

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