歯並びをキレイに整えるには、矯正装置が必要です。矯正装置というと、昔からあるような金属でできたものを思い浮かべる方も多いかと思いますが、今はさまざまな種類の装置が世の中に出回っていることをご存知でしょうか?
大人の矯正で主に利用されるのはワイヤー矯正とマウスピース矯正ですが、必要に応じて補助的に使用する装置もあります。
今回は、矯正装置にはどのようなものがあるのか、について解説します。
目次
1 ワイヤー矯正
ワイヤー矯正とは、ブラケットと呼ばれる小さなチップにワイヤーを通した装置を使って行う歯列矯正治療のことをいいます。ワイヤー矯正には、大きく分けて表側矯正と裏側矯正の2パターンがありますが、装置はさまざまな種類があります
1-1: 表側矯正
表側矯正とは、歯の表面にブラケット(ラビアルブラケット)をつけるものです。さまざまな不正咬合の症例に対応できる点がメリットですが、他人から装置が見えてしまう点がデメリットであると言えます。
表側矯正で使用する矯正装置は以下のようなものがあります。
メタルブラケット | 一般的によくみられる金属製のブラケット。 |
セラミックブラケット | セラミック製の白いブラケット。ホワイトワイヤーと組み合わせるとあまり目立たない。 |
クリアブラケット | プラスチック製の透明なブラケット。ワイヤーとブラケットの摩擦が少ないため歯の移動がしやすく、治療期間が短くてすむ。透明なので目立ちにくい。 |
ジルコニアセラミックブラケット | セラミックの一種であるジルコニアでできたブラケット。耐水性や強度、審美性に優れている。 |
セルフライゲーションブラケット | ブラケットの中をワイヤーが自由にすべる仕組みになっている装置。歯と装置の摩擦が少ないため、歯がスムーズに動き治療期間の短縮につながる。セラミックブラケットを使ったクリッピーブラケット、透明なブラケットを使ったデーモンブラケットがある。 |
1-2: 裏側矯正(舌側矯正)
裏側矯正(舌側矯正)とは、歯の裏側(舌側)にワイヤー矯正の装置リンガルブラケットをつけるものです。他人からは気づかれにくい点がメリットですが、装置に舌があたるので一時的に発音がしづらくなったり、表側矯正に比べて費用が高くなる点がデメリットです。
裏側矯正には「フルリンガル」と「ハーフリンガル」の2パターンがあります。フルリンガルとは上顎・下顎ともにリンガルブラケットをつけるもの、ハーフリンガルとは、他人から見えやすい上顎のみをリンガルブラケットに、下顎をラビアルブラケットにするものです。ハーフリンガルにすると費用がフルリンガルより安くなりますが、表側矯正よりも高くなります。
裏側矯正には、通常の金属製のブラケットとは別に「インコグニート」と呼ばれるカスタムメイドのブラケットを使用することがあります。これは患者さんの歯型を3Dスキャンしてブラケットの位置を決め、それをもとにCAD/CAMテクノロジーで装置を作製するものです。従来の装置よりもブラケットが薄く、患者さんごとにフルオーダーメイドで作製されるため舌の違和感や装置の脱離が起こりにくいことが特徴です。ただし、患者さんの歯型をドイツに送る必要があるため、実際に装置を使えるようになるまではおよそ5週間かかります。
2 マウスピース矯正
マウスピース矯正とは、透明なマウスピースを使って歯を動かし、歯並びを整えていく治療方法です。透明なので目立ちにくく、取り外しが自由にできるので食事の妨げにならない点がメリットです。一方、歯並びのがたつきが大きいなどの症例によっては適用できないことがあるのがデメリットです。マウスピース矯正の装置にもいくつか種類がありますが、ここではインビザライン・クリアコレクト・アソアライナーの3つを取りあげ、ご紹介します。
2-1: インビザライン
インビザラインは、1999年にアメリカで開発されたマウスピース型の矯正装置です。全世界の臨床データをもとに、3次元的に歯の動き方をシュミレーションして綿密な治療計画を立て、歯を0.25mmずつ動かせるようにマウスピースを作ることがその特徴です。治療前に治療終了までのすべてのマウスピースを作成するので、歯型を取るのは最初の1回だけ。装置は7日~10日ごとに自分で交換すればよいので、通院するのは1.5~3ヶ月に1回と通院回数が少なくて済みます。しかし、アメリカで製作するので治療開始までに1ヶ月ほどかかります。
ただ、装置は1日20~22時間以上装着しなければなりません。決められた時間装着していなければ、治療効果があらわれにくくなってしまうためです。また、途中で歯を削ったりするような歯の形を変える治療をすると、新しく作り直さなければならなくなることもデメリットであると言えるでしょう。
2-2: クリアコレクト
クリアコレクトとは、2006年にアメリカで開発されたマウスピース型の矯正装置です。3Dデジタルスキャナーで患者さんのお口の中を読み取り、歯を0.2~0.25mmずつ動かせるよう計画を立てて、治療終了まで使うマウスピースを一度に作ります。矯正力が強く、フィット感がタイトで異物感が少ない点が特徴です。
インビザラインよりも費用が安いこと、インビザラインよりも薄く目立ちにくいことがメリットです。こちらも22時間以上装着する必要があることがデメリットです。
2-3: アソアライナー
アソアライナーは、韓国で生まれたクリアアライナーの供給停止をきっかけに、日本の会社が開発した矯正装置です。装置は日本で作製するので、診断後2週間ほどで始められます。
月に1回通院して歯型を取り、それに合わせてマウスピースを作るため、通院回数が増えるものの、その時点での歯の形状にあったマウスピースを使うことができます。治療期間中は、ソフト・ミディアム・ハードの3種類あるマウスピースで矯正力をコントロールしながら、10日ごとに装置を交換していきます。
ただし、アソアライナーは奥歯のかみ合わせに問題のない前歯の歯並びを整えるケースや、矯正治療後に後戻りしたケースなど、症例が非常に限定されています。上下顎のかみ合わせの調整が必要なケースや歯並びのがたつきが大きなケースでは適用できないため注意が必要です。
3 床矯正
床矯正とは、顎を拡大させて歯を並べるスペースをつくるための装置です。主に小児矯正治療に利用される治療方法ですが、大人の場合は歯並びのがたつきが軽度な場合に適用されます。
床矯正は患者さんが取り外しのできるタイプと取り外しのできないタイプがあります。取り外しの出来る拡大床装置はネジを少しずつ回していくものですが、毎日14時間以上装着していなければ効果が薄れたり、後戻りしてしまうことがあるので注意が必要です。また、床装置のみで歯並びが改善するケースはあまりないため、多くの場合ほかの装置も併用することが多い傾向があります。
4 その他必要に応じて使用する装置
上記のほか、必要に応じて以下のような装置を補助的に使用することがあります。つけるときはきちんと治療効果が得られるよう、医師の指示通りにつけるようにしましょう。
顎内装置(顔の内側につけるもの) | |
リンガルアーチ | 歯の裏側のアーチに沿わせたワイヤーにスプリングをつけて、そのスプリングの弾力で歯を動かす装置 |
トランスパラタルアーチ | 抜歯をしたケースで前歯を後ろに引っ込めるときに奥歯を固定するための装置 |
顎外装置(顔の外側につけるもの) | |
ヘッドギア | 主に成長期の子どもに使用するが、成人では抜歯した場合に上顎の奥歯が前方に移動しないようにするときに使用 |
一口にワイヤー矯正、マウスピース矯正といっても、さまざまな種類があることがわかります。症例が限定されるものもありますが、お好みやライフスタイル、予算に応じて自分に適したものを選ぶことができます。
ただし、矯正治療は患者さんの協力があってこそ治療効果が得られるものです。特に取り外しが自由にできるタイプのものは、医師に指示された時間きちんと装着するようにしましょう。