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矯正治療で「歯ぎしり」は治りますか?

どうして「歯ぎしり」は起こってしまうのでしょうか。実はいまだに原因究明には至っていません。しかし、歯ぎしりを改善へと導くための方法はいくつかあり、その中でも矯正治療が選択肢の一つとして知られています。

 

本記事では、今日における歯科医学の見地をふまえつつ歯ぎしりの要因やリスクを考察しながら、矯正治療との関係性について取り扱っていきたいと思います。

 

「歯ぎしりを少しでも改善したい」「歯ぎしりは放置しないほうがいいの?」「治療をするべきか迷っている」といったご要望や疑問をお持ちの方は、ぜひご一読ください。

(1)矯正治療で歯ぎしりは改善できるの?

実は歯科医院に訪れる方の中には、あなたと同じように歯ぎしりで悩んでいる方が多くいらっしゃいます。

 

「自分では気付かなかったが、周囲に言われて自覚した」「若い頃から歯ぎしりの癖はあったが、年々ひどくなってきた」「歯が折れてしまった」など、抱えている悩みはそれぞれです。

 

歯ぎしりは主として3つの種類に分けられます。

 

 

グラインディング

 

ギシギシ・ギリギリと音を鳴らしながら上下の歯を強い力でこすり合わせます。多くの患者に当てはまる症例で、周囲に指摘されて自覚するパターンが一般的です。

 

クレンチング

 

無意識のうちに強い力で歯をくいしばるタイプ。スポーツ選手にしばしば見られます。周囲の人にも気付かれにくく、本人の自覚が促されないため厄介です。

 

タッピング

 

歯をカチカチと鳴らすタイプ。比較的珍しい症例といわれています。

 

 

 

歯ぎしりの原因を突き止めることで、症状を改善へと導く方法はいくつかありますが、選択肢の一つには矯正治療が挙げられます。というのも、歯並びや嚙み合わせの状態が歯ぎしりを引き起こしている可能性があるからです。

 

では果たして、矯正治療で歯列を良くすれば、本当に歯ぎしりを治すことは出来るのでしょうか。それについては、「改善するケースとほとんど変化が見られないケースがある」というのが現実的な回答になります。

 

一般的に、歯ぎしりを引き起こす要因は様々であると考えられています。それに加えて現時点では、歯ぎしりのメカニズムを完全に把握出来ていないのも事実です。

 

とはいえ、もともと歯並びや嚙み合わせは、虫歯・歯周病・顎関節症・肩こり・首筋の張り・頭痛・耳鳴り・高血圧と深く関わっていますので、歯ぎしりの改善治療をきっかけに矯正治療を試みる価値は十分にあるといえるでしょう。

 

「歯ぎしりに悩まされている」「歯列の悪さも気になっている」という方は、まずは一度、かかりつけの歯科医師に矯正治療を相談してみることをおすすめします。

(2)そもそも歯ぎしりの原因とは?

先述したように、歯ぎしりが引き起こされる原因は依然として明確になっていません。しかし、現在では以下のように考えられています。

(2-1)ストレス

「社会人になってから歯ぎしりを指摘されるようになった」という方は、もしかするとストレスが原因かもしれません。一説によれば、睡眠中に歯ぎしりをすることで恐れや不安を和らげようとするといわれています。

 

完治を目指そうとすると、更なるストレスを招く恐れがあります。歯ぎしりの治療に臨む際は、まずは「完全に治す」と捉えるのではなく、「出来る限り緩和させていく」という考え方で向き合うことが大切です。

(2-2)歯並び

歯列や噛み合わせの状態が歯ぎしりを引き起こしているともいわれ、このケースでは矯正治療がきっかけで改善される見込みがあります。

 

一方でまた、歯ぎしりが原因で歯並びが悪くなってしまう方もいらっしゃいます。まさに“卵が先かニワトリが先か”といったところですが、どちらにせよ、歯列の改善は顎関節症の予防や審美性の向上にもなりますので、矯正治療を検討する価値は十分にあるでしょう。

(2-3)喫煙・飲酒

生活習慣が歯ぎしりを招くこともあるといわれています。その中でもとりわけ、喫煙・飲酒が大いに関係しているという見解もあるようです。

 

しばしば、ストレスのために「煙草に火を付けてイライラを解消する」「お酒で酔っぱらって気持ちよくなる」といった行動をとる方がいらっしゃいますが、仮にストレスが歯ぎしりを引き起こす一要因であるのなら、喫煙・飲酒の習慣が大いに関係していると考えるのは、道理に適っているといえますね。

(2-4)職業・スポーツ習慣

みなさんは、日常生活(起きている間)で無意識に歯を食いしばることはありませんか?

 

力仕事に従事している、頻繁に高負荷な筋力トレーニングをしている、瞬発力が必要なスポーツをしているなど……実は、こうした職業やスポーツの場面で、歯を食いしばる“癖”がついてしまっている方は決して少なくないのです。

 

スポーツ科学の分野では、「トップアスリートは歯を食いしばることで力を最大限に発揮している」ともいわれています。みなさんが習慣的にスポーツを行っているのであれば、結果的にそれが要因となり、歯ぎしりを引き起こしてしまっているかもしれません。

(3)歯ぎしりを放置するとどうなる?

「昔から歯ぎしりをしているし、今更気にしても仕方ない」とすでに諦めている方もいらっしゃるかもしれませんが、注意が必要です。歯ぎしりを放置していると、顎や歯にダメージをもたらし、付随して様々な疾病や慢性疾患を引き起こすリスクが高まってしまいます。

(3-1)歯が脆くなる

みなさんは、歯ぎしりが歯にどれほどの負荷を与えているかご存じですか?歯科医学的には、噛む力の最大は、自分の体重と同等レベルだといわれています。つまり体重70キロの人が全力を出せば、70キロ相当の負荷を実現出来るわけですね。

 

もちろん、私たちは普段の日常生活では、噛む力の出力を制限しています。嚙む力をMAXにせずとも、食べ物を咀嚼することが十分に可能だからです。

 

ところが問題なのは歯ぎしりです。眠っている間(特にノンレム睡眠状態)は脳も休んでいるため、噛む力にセーブがかかりません。そのため、人によっては通常の数十倍にも及ぶ力で歯ぎしりをしているといわれています。

 

その結果、「歯がすり減る」「歯が欠ける(折れる)」「摩耗により知覚過敏になる」といったダメージを歯に与えることに……。若い頃は問題が顕在化しなくても、加齢に伴って歯ぎしりの影響が表れてきてしまうケースも珍しくはありません。

(3-2)歯周病を招く

歯ぎしりは、歯周病を引き起こしてしまう可能性があります。歯ぎしりの強い力が、歯そのものだけでなく、歯茎・歯根・周囲の組織にも負担をかけることで炎症反応を招き、間接的に歯周病の原因になり得るのです。

(3-3)顎関節症になる

強い力で食いしばったりこすり合わせたりする歯ぎしりは、常に顎にも負担をかけていることになります。

 

「口を開けると顎が痛む」「音が鳴る」「噛み合わせがズレ始めている」といった諸症状に自覚のある方は、歯ぎしりに原因が求められるかもしれません。顎関節症の可能性がありますので、出来るだけ早めのうちに歯科医院へ相談に行きましょう。

(3-4)肩こりや頭痛を引き起こす

睡眠中の脳はリミッターが外れてしまうため、歯ぎしりの噛む力は不自然なほど強く、結果的に顎・首・肩にかけて筋肉を極度に緊張させてしまいます。

 

「マッサージに行っても肩こりや首筋の張りが改善されない」「原因不明の頭痛が頻発している」という方は、歯ぎしりが原因の一部になっているかもしれません。心当たりのある方は、すぐに歯科医師に相談してみましょう。

(3-5)噛み合わせや歯並びが悪くなる

「若い頃から歯ぎしりの癖がある」という方に特に注意して頂きたいのが、嚙み合わせや歯並びです。

 

歯・歯茎・歯根・歯槽骨など……長い年月にわたってこれらの部位に負荷が与えられ続けると歯の位置がズレてしまい、嚙み合わせに深刻な影響をもたらす可能性があります。歯並びが悪くなることで顔の形が変わり、審美的な面でもデメリットを受けてしまうかもしれません。

 

「鏡を見ると顔のバランスが左右でズレている」「口を閉じると上下がうまく噛み合っていない」という方は、矯正治療も視野に入れながら歯ぎしりの改善を行うことをおすすめします。

(4)まずは出来ることから!歯ぎしりを改善する方法

歯ぎしりという現象は、まだまだ研究途上の分野。歯科医院が完全な治療方法を患者に提案することは難しいかもしれませんが、改善へと導くことはできるかもしれません。

(4-1)生活習慣を見直す

初めの一歩として、まずは生活習慣を見つめ直すところからスタートしてみてはいかがでしょうか。

 

ストレスなどの精神的な要因がトリガーとなって歯ぎしりを引き起こしているのであれば、自分なりのやり方で改善を図れる可能性があります。これを機に、喫煙・飲酒を控えてみるのもいいですね。

(4-2)マウスピースを装着する

歯ぎしりを改善へと導くには、長期的な視野で向き合っていく必要があります。即効性のある治療方法が確立されているわけではないため、歯ぎしりのダメージは日々刻々と蓄積されていくことになります。

 

歯の摩耗や顎関節症リスクを軽減するには、「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースの装着がおすすめです。睡眠中にこれを装着することで、歯・歯茎・歯槽骨へのダメージをかなり軽減することが出来ます。

 

ナイトガードを常用すれば、もしかすると、歯ぎしりそのものが徐々に減っていくかもしれません。まずはかかりつけの歯科医師に相談し、歯型をとってナイトガードをつくってもらいましょう。

(4-3)矯正治療を試してみる

これまで説明してきたように、歯ぎしりと矯正治療には、密接な関係があります。

 

歯列や嚙み合わせの状態が歯ぎしりを引き起こしてしまったり、その逆に、歯ぎしりによって歯並びが悪くなってしまったりすることもあるため、歯ぎしりに悩む方は皆、一度は矯正治療について検討してみる価値があるといえるでしょう。

 

現在の歯科医学的な見地としては、矯正治療で歯ぎしりの症状を完全に治すことは難しいですが、歯列を綺麗にすることで、改善へと導くことはできるかもしれません。

(5)まとめ

寝ても覚めても悩まされる、歯ぎしりの問題。

 

「歯並びが原因で歯ぎしりが起こっているの?」「矯正治療で歯ぎしりは良くなる?」と歯科医院へ相談にやって来る患者は後を絶ちません。

 

結論をいえば、矯正治療で歯ぎしりの症状が改善される可能性はありますが、ほとんど変化が見られないケースもあります。

 

とはいえ、口腔内に高負荷をかける歯ぎしりは、結果として歯並びや嚙み合わせを悪くしてしまいますので、みなさんもぜひ歯ぎしり治療をかねて、矯正治療を検討してみるとよいでしょう。

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