上下の前歯の中心にある線を正中線と言います。
普通は正中線が上下で揃っているものなのですが、たまに中心位置がずれている方がいます。
「ほとんど目立たないし、問題ないでしょ?」という方もいるかもしれません。
でも実は、口だけではなく全身に影響が出る可能性があるんです。
そこで今回は、正中線のずれと矯正治療ついて解説していきます。
矯正治療を迷っている方は、是非この記事を参考にして下さいね。
目次
1 歯の中心がずれている「デメリット」
中心線がずれていると、次のようなデメリットがあります。
・噛み合わせが悪い
・顎関節症になりやすい
・発音しにくい
・肩こり・頭痛になりやすい
それぞれについて、詳しく解説していきます。
1-1:噛み合わせが悪い
前歯の中心が合っていない状態は、噛み合わせが合っていないことになります。
左右どちらかに歯や顎がずれているので、歯が噛んでいる部分と噛んでいない部分があって、しっかりと歯が噛み合っているところは、食材を噛み砕くことが可能です。
しかし、正確な噛み合わせの位置からずれているところは、食材を細かく噛み砕けないため、食べカスが残りやすくなります。
また、左右のどちらかの、頬の粘膜に食べ物が詰まりやすいといった症状がある場合には、噛み合わせが悪い可能性が高いです。
1-2:顎関節症になりやすい
口を開け閉めする時には、下顎と繋がっている耳の横の関節が動きます。
顎関節症は、関節周辺に負担がかかりすぎて、スムーズに口が開けにくくなったり痛みが生じたりすることです。
中心のずれで噛み合わせが悪いままだと、関節周辺にかかる負担が大きくなって、顎関節症を引き起こしやすくなります。
1-3:発音しにくい
正中線のずれは、発音にも影響します。
歯がずれている部分から空気が漏れやすく、話しにくく感じることがあります。
特に「サ行」は、舌を大きく動かす必要があり、歯並びがずれていると舌の動きが制限されてしまい、はっきりと発音するのが難しいのです。
1-4:肩こり・頭痛になりやすい
噛む動作は顎の関節だけでなく、口周りの筋肉も一緒に動きます。
噛み合わせが正しい位置の場合には、関節や筋肉に均等の力がかかるので、負担になることは、ほとんどありません。
しかし、歯並びや顎の位置がずれている状態で噛み続けると、咀嚼筋という筋肉のバランスが悪くなります。
咀嚼筋のバランスが崩れると、首の筋肉が引っ張られて緊張した状態が続くため、肩こりや頭痛を引き起こしやすいのです。
2 歯の中心がずれる「4つの原因」
歯の中心が合っていないのは、主に次の4つが原因になります。
・歯の大きさが違う
・歯の生え方の問題
・顎の形が左右非対称
・悪習癖
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
2-1:歯の大きさが違う
人の体は左右対称が基本です。
例えば、目、耳、手などは左右対称にあります。
それと同様に歯も、右側に奥歯があれば、左側にも奥歯があり、大きさも同じなのが一般的です。
しかし、例外で左右の歯の大きさが異なるケースがあります。
位置は左右対称でも、歯のサイズが違うので中心線がずれてしまうのです。
2-2:歯の生え方の問題
歯の生える位置によっては、正中線が合わないことがあります。
例えば、親しらずが斜めに生えていて、前の歯を押してしまったり、八重歯のように歯の生える位置が、正しい歯並びから外れて生えたりすると、噛み合わせや歯並びがずれてしまいます。
また1本~数本の永久歯が、生まれつき足りない先天性欠如歯の場合にも、残りの歯が空いているスペースに傾いて、正中線がずれてしまう可能性が高いです。
2-3:顎の形が左右非対称
顎の骨が歪んだり、曲がったりしていると、上下左右のバランスが悪くなり、結果として歯並びの位置にも歪みが生じて、歯の中心がずれてしまいます。
また遺伝が原因で、左右の顎の成長が異なって、歯並びを大きくずらしてしまう場合もあります。
2-4:悪習癖
悪習癖とは、歯並びに悪い習慣や癖のことです。
次のような癖がある場合には、歯並びや噛み合わせが悪くなりやすいです。
・指を吸う
・頬杖を付く
・舌で歯を押す
特に、頬杖や舌で歯を押す癖は歯並びが悪化しやすいので注意しましょう。
3 中心のズレの「矯正方法」
正中線のずれは、矯正治療で改善することが可能です。
治療には、次の4つの矯正方法があります。
・ワイヤー矯正
・マウスピース矯正
・外科手術
・ミニインプラントアンカー
3-1:ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、金属のワイヤーとブラケットという装置を、歯の表面に固定して歯並びを整える治療法です。
ワイヤー矯正では、歯を動かすスペースを確保してから、歯に圧力をかけて動かしていきます。
歯を移動するスペースがない場合には、抜歯が必要になるケースもあります。
矯正治療の中でもワイヤー矯正は、スタンダードな治療法になるので、治療範囲も広く、ほとんどの症例に対応することが可能です。
また最近では、金属部分をプラスチックやセラミックに変えて行うワイヤー矯正もあり、この方法だと、見た目がかなり改善されます。
他にも、矯正中の見た目が気になる場合には、歯の裏側にワイヤーとブラケットを取り付けて、歯並びを整える治療法もあります。
3-2:マウスピース矯正
マウスピース矯正とは、薄いプラスチックでできたマウスピースを歯に装着しながら歯並びを綺麗にする治療方法です。
使用するマウスピースは、治療開始から最終的な歯並びまでの複数のマウスピースを、コンピューターでシミュレーションして作製します。
最終的な理想の歯並びまでシミュレーションすることができるので、正確性が高い治療のひとつです。
またマウスピース矯正は、小さい力で少しずつ歯を動かしていくため、ワイヤー矯正より比較的に痛みが少ないと感じる方が多いです。
とはいえ、マウスピース矯正も痛みはあります。
新しいマウスピースの付け始めや装着してから2~3日は、痛みがでる可能性が高いです。
マウスピースには種類があり、歯科医院で使用しているメーカーによっては、適応できないケースもあります。
3-3:外科手術
中心のずれの原因が骨格の場合には、外科手術が必要になることがあります。
特に、顎の位置が大きくずれているケースでは、ワイヤー矯正やマウスピース矯正で噛み合わせを安定させてから、一部の骨を切除して噛み合わせの平面を揃える手術をすると、正中線のずれが改善します。
3-4:ミニインプラントアンカー
ミニインプラントアンカーとは、矯正用の小さいネジを歯茎の中に入れる治療法のことです。
ミニインプラントアンカーは、ワイヤー矯正と併用して活用します。
歯茎に埋め込んだ小さいネジを固定源にすることで、ワイヤー矯正だけよりも効率的に、短期間で歯を移動させることが可能です。
また、この方法だと、抜歯をせずに歯並びを綺麗にできる可能性が高いです。
ネジを歯茎に埋め込む処置は、約15~20分で完了します。
事前に精密な診査、診断を行い、ネジを埋め込む位置を確認しているので、処置自体に時間はかかりません。
さらに、歯茎に麻酔をしてからネジを固定させるため、痛みや腫れは、ほとんどありません。
4 「中心のずれ」を治して健康になろう!
歯の中心のずれは見た目だけではなく、健康に影響がでる可能性があります。
また、中心のずれが軽度な場合には、治療期間や費用があまりかからずに済むケースが多いです。
しかし、正中線のずれている期間が長いほど、噛み合わせや歯並びが悪化しているため、費用がかかったり、治療期間が長引いたりしやすいです。
中心のずれに気づいたら、なるべく早めに担当医に相談しましょう。