最近では、マウスピース型の矯正治療に人気があり、種類も豊富になっています。
そのマウスピース型の矯正装置のひとつが「マルチファミリー」です。
今回は、マルチファミリーの装置について紹介していきます。
・マルチファミリー装置の効果が知りたい
・子どもの矯正治療を考えている
といった方は、是非この記事を参考にして下さい。
目次
1 マルチファミリー装置はいつから使う?
マルチファミリーは、5才以上の子どもから使用することが可能です。
そもそも、子どもの矯正は、2段階の治療時期があります。
それが、「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」です。
Ⅰ期治療では、顎の骨が柔らかいうちに顎の幅を広げて、歯が正しい位置で生えてくるように誘導していきます。
このⅠ期治療で使用する装置が、マルチファミリーです。
マルチファミリー装置を口の中に装着することで、歯並びが悪くなった原因を取り除きながら歯の生えてくる方向を誘導していきます。
また、マルチファミリー装置は、いくつか種類があります。
5才以降から治療を始めた場合にも、年齢や口の状態に合った装置を使用することが可能です。
一方のⅡ期治療では、歯を動かす装置を取り付けて、歯並びを整えていきます。
大人の矯正の開始時期や金属を使ったワイヤー矯正などを使用した、矯正治療はⅡ期治療になります。
2 マルチファミリー装置の特徴
マルチファミリー装置の特徴は、次の通りです。
・口の機能の改善
・今の状態に適した装置が使える
・痛みが少ない
・日中に装着する時間が短い
・見た目が良い
・適応症の範囲が広い
・矯正費が安く済む
・治療期間が短くなる
・抜歯する可能性が低くなる
詳しい特徴について、紹介していきます。
2-1:口の機能の改善
マルチファミリーは、口の筋機能を改善させながら、歯を誘導していく矯正装置です。
子どもの歯並びが悪くなる原因が悪習癖の場合には、マルチファミリー装置を使用することで、大きく改善していく可能性が高いです。
悪習癖とは、舌で歯を押す、唇や爪を噛む、指を吸うなどといった動作が癖になっていることです。
様々な悪習癖は、歯並びを悪くする原因になるだけではなく、口周りの筋肉の発達が正しく機能しなくなる原因にもなります。
マルチファミリー装置を使用することで、口の筋肉のトレーニングにもなり、正しく舌や唇などを動かせるようになります。
例えば、ポカンと空いていた唇が、閉じられるようになると、口の中が乾燥しにくくなり虫歯や歯肉炎の予防になるのです。
他にも、食べ物や飲み物を飲み込む時には、嚥下する動きが必要です。
嚥下は、喉や舌、唇の筋肉が上手く使えないとできない動作です。
特に子どもが嚥下する時は、口周りの筋肉を上手く使えずに、気管支に食べ物が入って咳きをすることがあります。
マルチファミリー装置では、嚥下をする筋肉も鍛えられるので、上手く飲み込めるようになり、食事中のトラブルが起きにくくなります。
2-2:今の状態に適した装置が使える
マルチファミリー装置には、5つのタイプの型があります。
年齢や歯並びの状態によって、使用する装置が変わり、段階的に確実に歯並びを誘導することが可能です。
2-3:痛みが少ない
金属のワイヤーを使用した矯正治療は、歯だけに負荷をかけて動かすので、痛みが強くでてしまいがちです。
マルチファミリー装置では、歯と歯茎に少しずつ力をかけていくようになっているため、痛みがほとんどなく、矯正生活を快適に過ごすことができます。
2-4:日中に装着する時間が短い
一般的なマウスピースの矯正治療は、1日に20時間以上の装着時間が必要な場合が多いです。
マルチファミリー装置は、1日の装着時間が日中の1~3時間と、就寝時だけになります。
1日の装着時間が15時間以上を理想としています。
日中の装着時間が短いことで、子どもが学校で装着する必要がなくなり、他人の目を気にする心配がありません。
また、装置を紛失する心配も減ります。
2-5:見た目が良い
床矯正というプラスチックを使った小さい入れ歯のような装置を、Ⅰ期治療で使うことがあります。
床矯正の装置は、金属を使用している部分があり装着すると、見た目が目立ってしまいます。
マルチファミリー装置は、透明のシリコン素材をベースとして作製されていて、見た目が良いのが特徴のひとつです。
2-6:適応症の範囲が広い
マルチファミリーは、次のような歯並びの状態が対象になります。
・上顎前突(上の前歯が歯並びから前に出ている状態)
・開咬(上下の前歯が噛み合っておらず、大きく隙間ができている状態)
・過蓋咬合(上の前歯が下の前歯を覆っていて見えない状態)
・叢生(歯並びがガタガタになっている状態)
また、次の2つの歯並びの状態は、対象外になります。
・下顎前突(下の前歯が歯並びより前に出ている状態)
・空隙歯列(歯と歯の間に大きな隙間ができている状態)
2-7:矯正費が安く済む
マルチファミリーの装置は、子どもの矯正でⅠ期治療の目的で使用することが一般的です。
Ⅰ期治療で理想の歯並びになっていない場合には、Ⅱ期治療へと治療を進めて行きます。
マルチファミリーの装置でⅠ期治療を始めた場合には、口周辺の筋肉が正しく機能していることがほとんどなので、Ⅱ期治療での矯正期間が短くなる可能性が高いです。
矯正期間が短くなることで、毎月かかる調整料や材料費がかからなくなり、結果として治療費が安く済みます。
矯正費は、歯科医院によって差があります。
マルチファミリー装置の費用は、5万円~40万円が相場です。
Ⅰ期治療だけの金額を提示していたり、小児矯正としてⅡ期治療を含めた金額を提示していたりするため、歯科医院によって金額に差があります。
2-8:治療期間が短くなる
マルチファミリー装置を使用したⅠ期治療の矯正期間は、1~2年ほどで完了するのが一般的です。
また、マルチファミリー装置では、Ⅱ期治療で行うワイヤー矯正と同時に使用するタイプの装置があります。
ワイヤー矯正と平行して使うことで、Ⅱ期治療の期間をさらに短縮できます。
2-9:抜歯する可能性が低くなる
永久歯が生え揃った状態から矯正治療を開始する場合には、歯を移動させるスペースがないので、抜歯をして空間を確保します。
虫歯にもなっていない健康な歯を抜くことに、抵抗がある方も少なくありません。
しかし、マルチファミリー装置を使用してⅠ期治療から矯正を開始した場合には、歯を移動させるスペースが既に確保できている状態になっていることが多いです。
そのため、永久歯を抜かずに矯正治療ができる可能性が高くなります。
3 マルチファミリー装置で注意する「4つのこと」
マルチファミリー装置を使用する時には、次の4つのことに注意しましょう。
・全ての歯並びが改善できるわけではない
・Ⅱ期治療が必要な場合もある
・装着時間を守らないと治療が長引く
・歯科医院によっては取り扱っていない
それぞれについて、解説していきます。
3-1:全ての歯並びが改善できるわけではない
マルチファミリー装置は、全ての症例に対応している装置ではありません。
特に、重度の歯並びの場合には、マルチファミリー装置が適応できないこともあります。
3-2:Ⅱ期治療が必要な場合もある
マルチファミリー装置は、口周辺の筋肉のトレーニングになり、最終的には正しく機能できるようになることがほとんどです。
また、同時に永久歯が正しい位置に誘導する役割もあるので、Ⅰ期治療だけで矯正治療が完了することがあります。
ただ、Ⅰ期治療の終了後、噛み合わせの位置がまだズレていたり、見た目をもっと改善したい場合には、Ⅱ期治療が必要になるケースもあります。
3-3:装着時間を守らないと治療が長引く
マルチファミリーの装置には、決められた装着時間があります。
装着時間を守らないと、正しい位置に歯を誘導できなかったり、口周辺の筋肉が鍛えられなかったりして、歯並びが改善しない原因になります。
また、矯正治療を長引かせる原因にもなるので、必ず装着時間は守るようにしましょう。
3-4:歯科医院によっては取り扱っていない
矯正の装置には、多くの種類があります。
歯科医院によっては、マルチファミリーを取り扱っていないことがあるので、マルチファミリー装置を希望する場合には、事前に歯科医院に確認しておきましょう。
4 マルチファミリー装置で歯並びを整えよう!
マルチファミリーは、口周りの筋肉を鍛えながら、歯を生える方向を誘導する装置です。
歯並びを整えるだけではなく、鼻呼吸ができるようになったり、しっかりと唇を閉じて食べ物を飲み込めたりができる効果があります。
また、早めに矯正治療を始めることで、費用が安く済むことがあります。
素敵な口元を子どもにプレゼントするためにも、まずは担当医に相談して見ましょう。