「健康は一生の財産」とよく言われています。
しかし、正しく体が機能していないと、健康を維持することはできません。
例えば
・ポカンと口が開いている状態が長い
・鼻が詰まりやすく風邪を引きやすい
・眠りが浅い
などといった症状は、正しく体が機能していないのが原因で起きている可能性が高いです。
顎顔面矯正は、歯並びだけではなく、体が不調になる原因を取り除いて、体を健康へと導く治療法です。
とはいえ、顎顔面矯正は、何だか大変な治療になりそう・・・・・・というイメージがある方もいると思います。
そこで今回は、顎顔面矯正の特徴やメリットについて解説してきます。
目次
1 顎顔面矯正は「見た目の良さ」が目的ではない
矯正治療で見た目の歯並びだけをキレイにしても、身体は健康にはなりません。
例えば、見た目だけが良くなっても、噛み合わせのバランスが悪いままだと、食べ物をしっかりと噛むことができずに、消化器官に負担がかかってしまいます。
他にも、口周辺の筋肉が正しく機能しないまま、歯並びだけが良くなった場合には、顔のバランスがズレて、顔が歪む原因にもなります。
顎顔面矯正は、歯には無理な負担をかけずに、あごの成長に適した装置を使いながら健康な身体と美しい歯並びへと整えていくのが目的です。
噛み合わせのバランスや口周辺の筋肉が、どんどん正しく機能していくので、身体が健康になっていきます。
特に、乳歯(こどもの歯)や永久歯(大人の歯)が生えている混合歯列期に、この矯正治療をすると多くのメリットが期待できます。
2 顎顔面矯正の特徴
顎顔面矯正の特徴は、次の通りです
2-1:適応できる期間が限られている
顎顔面矯正は、5~9才の成長期に治療をするのが一般的です。
上あごの成長のピークは5才で、10才には成長が完了している場合がほとんどです。
つまり、10才を過ぎると、骨と骨のつなぎ目が強くなるので、装置を使用してもあごが広がりにくく時間がかかるようになるので、治療期間が長くなってしまいます。
また、上あごの成長が遅れると、下あごの成長も合わせて小さくなったままになります。
上下のあごの成長が発育しないままでは、歯の大きさがあごの成長を追い越してしまい、歯列に入りきらず歯並びがガタガタになってしまうのです。
そのため、あごの成長がピークを越える前に、顎顔面矯正を開始するのが重要なポイントです。
口の状態によっては、10才を過ぎてからでも顎顔面矯正ができるケースもあります。
ただ、その場合には、顎顔面矯正を行った後にプラスで、矯正治療が必要になる可能性が高いです。
2-2:装置を固定する必要がある
顎顔面矯正では、主に次の2つの装置を装着していきます。
・急速拡大装置
急速拡大装置は、歯の内側に付けることで、あごの骨の成長を促しながら、骨格や歯列(歯が並ぶ部分)を広げていきます。
装置の中央にある穴に、ネジを差し込み回すことで、装置が広がり、あごの横幅や側方が拡大されていきます。
急速拡大装置は固定式なので、治療期間中は外すことはできません。
また、上あごに装置を付けるため、見た目が良く、外からは見えないような作りになっています。
・リンガルアーチ
リンガルアーチは、下の歯の裏側に固定して、歯列を広げたり、歯を動かしたりすることができる拡大装置のことです。
リンガルには、舌側という意味があり、リンガルアーチは、舌の裏側専用の装置になります。
金属のワイヤーが歯を押すことで、歯列が前や横に拡大していきます。
上あごの急速拡大装置に比べて、ゆっくりとしたスピードであごを広げていくので、痛みが少ないのが特徴です。
また、リンガルアーチは、舌の内側に沿った形になっていて、違和感が少なく慣れるのも早い傾向があります。
2-3:口腔筋のトレーニングを併用することもある
顎顔面矯正をしている時に、口腔筋のトレーニングを併用する歯科医院が多いです。
口腔筋トレーニングでは、舌、頬、唇などの口周りの筋肉を正常に機能させることで、歯が生えてくる位置を正しい位置に誘導することができるからです。
例えば、常にポカンと口が開いている状態は、唇を閉じる筋肉が発達していないことで起きます。
また、頬筋や咬筋という頬にある筋肉は、噛む時に必要な部分で、発達していないと、あごが疲れやすくなり、しっかりと食べ物を咀嚼することが難しくなります。
特に現代は、食生活の様式が変わり、柔らかい食べ物や噛む回数が少なくても飲み込める食べ物が増えて、あごや筋肉が発達しにくい環境です。
口周りの筋肉を鍛えることで、生えてくる歯をキレイに並べるだけではなく、口本来の機能を正常に動かせるように発育していきます。
2-4:ネジを回す必要がある
急速拡大装置は、ネジを回すことで装置が広がり、歯列やあごの骨を拡大していきます。
保護者の方が、1日1回ネジを回して、装置を広げる作業が必要になります。
2-5:治療期間が短くなる
顎顔面矯正は、あごを広げて、歯並びを正しい位置に誘導しながら、口の機能を正常にさせる治療法です。
そのため、顎顔面矯正だけで矯正治療が、完了する場合があります。
顎顔面矯正の治療期間は、1~3年が一般的です。
ただ、歯並びの状態によっては、顔面矯正の完了後に、矯正治療が必要になるケースもあります。
矯正治療が必要になった場合でも、歯が並ぶ基盤がほとんど完成している状態なので、トータルの矯正期間が短くなる可能性が高いです。
2-6:歯磨きが難しい
顎顔面矯正で使用する装置は、固定式の装置がほとんどなので、歯磨きのケアが難しくなります。
歯ブラシ以外にも、タフトブラシといった毛先が細い歯ブラシや歯と歯の間を掃除する歯間ブラシを使う必要があります。
矯正中に虫歯になると、矯正を一度中断して治療することになり、矯正期間が長引く原因になります。
装置が付いていてもしっかりと歯磨きができるように、担当医や歯科衛生に歯磨きの仕方を教えてもらいましょう。
3 顎顔面矯正の「6つのメリット」
顎顔面矯正をすることで、次の6つのメリットがあります。
3-1:口の機能を正しく発達させることができる
顎顔面矯正では、口の機能を発育にも影響があり、口腔筋のトレーニングを併用すると、より効果的です。
例えば、食べ物を飲み込む時には、嚥下機能が必要です。
舌や喉の筋力が十分に発達していない場合には、上手く飲み込むことができずに、食道ではなく気管に食べ物が流れて、咳き込む症状がでます。
そこで、口腔筋のトレーニングをすることで、正しく飲み込むことができるようになり、咳き込むといった症状が治まります。
3-2:良質な睡眠がとれる
顎顔面矯正では、上あごの骨を広がると同時に鼻腔(びこう)も拡大していきます。
鼻腔が広がることで、鼻呼吸がしやすくなります。
また、就寝中の呼吸も以前よりしやすくなるので、良く眠れるようになるのです。
3-3:アレルギーの改善
あごが十分に発達せずに小さいままだと、気管も細く狭い状態です。
気管が発達せずに、狭いままだと鼻呼吸では苦しくなり、口で呼吸をするようになります。
口から入った空気は、喉を直撃して、リンパ組織を傷つけてしまいます。
リンパ組織が損傷すると、体の免疫力を低下させる原因になり、色んなアレルギーを引き起こしやすくなって風邪も引きやすくなるのです。
しかし、顎顔面矯正を行うと、あごが発達して大きくなると同時に、鼻腔も広がって鼻呼吸ができるようになります。
その結果、リンパ組織を傷つけることが少なくなり、喘息やアトピーといった症状が改善するケースもあります。
3-4:姿勢が良くなる
噛み合わせがズレていたり、下あごがさがっていたりすると、姿勢が猫背になりがちです。
顎顔面矯正では、あごを広げて噛み合わせの位置やバランスを改善することができるため、姿勢が良くなります。
3-5:後戻りが起こりにくい
顎顔面矯正の治療をすると、歯の後戻りが起こりにくくなります。
後戻りとは、矯正治療をした歯並びから、元の歯並びに戻ってしまう現象のことです。
特に、あごの成長のピークを過ぎてから矯正を行った場合は、歯だけを移動させた治療になるので、後戻りが起きやすいです。
一方で、顎顔面矯正は、あごの骨格を広げて、自然と歯がキレイに並ぶように誘導していたり、口周辺が正しく機能できていたりと、歯の土台の部分がしっかりと整っているため、後戻りが起こりにくくなります。
3-6:トータルの矯正費が安くなる
顎顔面矯正の費用は、40~50万円が相場です。
顎顔面矯正が完了しても歯並びが気になったり、噛み合わせがズレていたりする場合には、矯正治療をするため、追加で費用がかかってきます。
しかし、矯正治療では、歯を動かす範囲が少なくて済むケースが多く、装置を付けている期間が短縮でき結果として、治療費が安くなることが多いです。
4 顎顔面矯正で健康な体になろう!
顎顔面矯正は、歯並びだけではなく、口や体の本来の機能を改善する治療法です。
ただ、治療できる期間が限定されているので、子どもの矯正を考えている場合には、早めに担当医に相談しましょう。