子供の床矯正では、歯を抜かない保存的な治療が基本となっています。子供の永久歯は6歳くらいに生えてきますが、歯並びのトラブルは顎の大きさが小さいことに起因することが多いです。床矯正治療は、顎の大きさを整えながら、歯が生えるスペースを確保します。床矯正装置は着脱が可能で、歯を抜かずにすみ、痛みが少ないという点が、床矯正の主なメリットです。この記事では、床矯正のメリット・デメリットや適用となる年齢、一般的なワイヤー矯正との違いなどについて解説します。
目次
1 床矯正治療とは?
歯並びの問題の多くは、顎の大きさが小さすぎることに関係しています。
小さな乳歯が隙間なくきれいに並んでいても、永久歯は乳歯よりも大きいためデコボコになる場合が多いです。
お子さんの永久歯がきれいに並ぶかどうかが気になる親御さんは、幼いときに歯科医師に相談して、床矯正を検討されてはいかがでしょうか。
床矯正治療は、歯を抜かずに顎を歯がきちんと並ぶ大きさに拡大する治療法です。
装置は入れ歯の「床」といわれる顎に密着させる部分とワイヤーで成り立っています。
ネジがついており、ネジを巻いて拡げていきます。
1-1 床矯正による治療の目的
床矯正の一番大きな治療目的は、委縮した顎を正しい大きさに拡大することです。
次に歯を正しい位置に移動させます。
ほかに、後ろにさがっている下顎を前の方に誘導したり、舌などの悪習慣をやめさせたりします。
治療は基本的に、一方向にしか移動できませんので、顎を拡大する装置や歯を押し出す装置など、数種類の装置を組み合わせながら治療を進めることになります。
治療開始時期が早いと、治療も早く終了します。
1-2 ワイヤー矯正と比較|床矯正のメリット
矯正治療には、ワイヤー矯正との違いによるいくつかのメリットがありますので紹介します。
・歯を抜かずに顎を拡大する
歯の治療には、外科的な処置、補綴的な処置、保存的な処置と大きく3つに分かれます。
一般的なワイヤー矯正治療は、歯を抜いてスペースを作るという方法によりますので、外科的な処置を伴います。
大人になれば補綴的な処置によって、歯を削って歯並びを整えることは可能です。
床矯正治療は、保存的な処置の立場による治療方法といえます。
できるだけ、虫歯のない健康な歯を残したい方や、歯を抜くことに抵抗がある方に床矯正治療は適しています。
・床矯正装置は着脱可能
ワイヤー矯正装置は一度装着すれば自分では外せませんが、床矯正装置は取り外しが可能です。
食べるときに外せるので、食事のときに違和感がありません。
また、装置を外せば歯磨きをいつも通り丁寧に行えて、虫歯になりにくい点は大きなメリットです。
・治療に伴う痛みが少ない
床矯正装置による拡大は強い力がかかりにくく、痛みが少ないというのもうれしいポイントです。
急速拡大装置では強い力がかかりますが、基本的には弱い力でゆっくりと治療を進めます。
痛みがあるときは、ネジの回転を調整できます。
ワイヤー矯正は自分では調整できませんので、この点も大きな違いといえます。
・費用が安い
床矯正装置は、ワイヤー矯正よりも費用が安いのもメリットです。
1-3 ワイヤー矯正と比較|床矯正治療のデメリット
床矯正装置は、取り外しができることによるメリットがある反面、デメリットもあります。
・装着時間の管理が必要
床矯正は、取り外しが自由に行えるので、自己管理を厳しく行う必要があります。
装着時間が短くなれば治療計画が狂い、期待する効果が得られなくなったり、治療期間が長引いたりします。
お子さんは、つい外してしまうかもしれませんので、親御さんのサポートが必要でしょう。
ワイヤー矯正の治療は、歯科医師の管理のもとで進められますので、自己管理の必要はありません。
・違和感や異物感がある
矯正には口の中に装置を入れるので多かれ少なかれ違和感や異物感があるものです。
ワイヤー矯正よりも床装置は大きいので、最初は違和感が大きいでしょう。
また、そのために発音がしにくくなるかもしれません。
ですが、きちんと装着していれば、1~2週間で慣れてきます。
・細かく歯並びを整えられない
歯そのものを移動させるわけではないため、細かく整えるには不向きです。
歯列の乱れが大きい場合はワイヤー矯正によって整える必要があります。
2 床矯正装置の装着で注意すべき4つのポイント
床矯正の装置は、プラスティックでできた「床」という部分にワイヤーとバネ、ネジが埋め込まれています。
装置には平行に拡がるものと、扇状に拡がるものの2種類あります。
上顎の歯肉は食べ物があたっても痛くないので、装置を装着しても痛くなりません。
ですが、下顎の歯肉は薄いため拡大するペースに違いがあります。
床矯正装置について、着脱方法や装着時間、ネジの巻き方などについて詳しく説明します。
2-1 床矯正装置の着脱方法
装置の入れ方や外し方を正しく行わないと、装置が曲がったり折れたりする可能性があります。
装置に不具合が生じると期待した結果が得られなくなるかもわかりませんので、装置の正しい着脱方法を学ぶことは重要です。
お子さんが着脱したときは、がたつきがないか、浮いていないかを親御さんが確認してくださいね。
バネがゆるくなると外れやすくなりますので、歯科医院に行きましょう。
・入れ方
装置を歯に合うところまで入れてから、床部分の前後左右の4カ所をしっかり押します。
装置にがたつきがないか、ぴったりはまっているかを確認しましょう。
動かしている歯のプラスティック部分が浮きやすいので特に注意が必要です。
※注意:噛んだり、ワイヤーを押したりして入れないようにしてください。
・外し方
装置は必ず両手を使って、奥歯のワイヤーから外します。
前歯のワイヤーで外すのはやめましょう。
片手で外すとひずみによって、バネが金属疲労を起こして折れる可能性があるからです。
2-2 装置を装着する時間
治療を早く終わらせたいのであれば、できるだけ長時間の装着が望ましいでしょう。
食事のときの噛む力が移動した歯を安定した場所へと導きます。
噛む刺激をあたえるため、食事するときは必ず外すことが大切です。
国語や英語、音楽など、発音がある授業のときは、装置があれば発音しにくいので外します。
1日12時間以上装着していれば、少し治療期間は長引くかもわかりませんが治療は可能です。
装置を外していると後戻りしてしまい、装着したときにきつく感じるかもわかりません。
きつい場合はネジを半回転巻き戻して装着して、30分後に戻します。
新たに回転する場合は、2~3時間経ってから行います。
2-3 ネジの巻き方と巻くペース
ネジは90°にひとつ穴が開いています。
穴にキー(ネジを巻くための棒)を差し込んで拡げる方向へ回します。
装置が合わないときや、痛いときは逆に巻き戻すことも可能です。
90°回したとき、平行に拡がる装置のネジは0.2mm、扇状に拡がる装置は0.8mm拡大します。
歯を前方、後方に移動させる装置は平行に拡がる装置と同じです。
拡大は基本的に1週間で45°ずつ2回巻きます。
きついと感じるときは、30°を3回巻くといいでしょう。
1カ月たつと、上顎の平行タイプでは、痛くなければ毎日拡大して1週間で0.7mm拡大するのが最適です。
下顎は骨の構造が上顎とは異なるので、1カ月で1mmの拡大が基準となります。
病気で熱があって苦しいときは、装置を外して治療に専念しましょう。
無理はしないで、治ったらまた装着します。
ただし、長期間装置を外していると合わなくなるため、装置のネジを巻き戻します。
このように、体調などによって調整できることも、床装置のメリットです。
2-4 装置のお手入れ方法
床矯正では、ブラシ(使いふるしのハブラシや入れ歯用ブラシ)を使って装置をきれいにすることが大切です。
もっとも汚れやすいのが、構造が複雑なネジの部分。
汚れがたまるとネジが動きにくくなったり、まったく動かなくなったりします。
動かなくなると修理が必要になります。
ハブラシの毛先をあてて、丁寧に汚れを落としましょう。
床はプラスティックで細菌が繁殖しやすいので、こまめにブラシをかけます。
また、除菌のために入れ歯用の洗浄剤を使えば、浸けておくだけで、イヤなにおいやぬめり、ブラシで落ちない汚れも取れて便利です。
ワイヤーは折れたり曲がったりしやすいので、力を入れずにやさしく汚れを落としてください。
3 床矯正の適用年齢
受け口の場合は、4歳ごろが目安です。
通常は最初の永久歯が生えてくる6歳ごろがいいでしょう。
抜歯をする矯正とは異なり、永久歯が生えそろうのを待つ必要はありません。
犬歯が生える前に、前歯4本の歯並びがきれいになれば、大きく乱れた歯並びにはならないでしょう。
早くはじめれば、短い期間で終了します。
親御さんが、お子さんの歯並びが気になったときが、相談する時期だといえます。
まとめ 永久歯が生えるころに開始できる床矯正治療
歯列の乱れは、顔の見た目に大きく影響します。
子供の歯並びが気になる親御さんも、できれば生えたばかりの健康な歯を抜くことは避けたいのではないでしょうか。歯を抜かずに顎を拡大する床矯正治療は治療の痛みも小さく、ワイヤー矯正よりも費用も少ないことが大きなメリットです。床装置は取り外しできて、食事や歯磨きもいつも通りで、お子さんの負担も少ないでしょう。子供の歯並びが気になったら、この記事を参考にして、歯科医院で相談してみてくださいね。