「呼吸は心と身体が健康になる基本」と言われるほど、呼吸の仕方は大事です。
しかし最近では、鼻呼吸ではなく口で呼吸をしている子どもが、多くなっています。
口呼吸が習慣になってしまうと、口だけではなく心や身体の健康にも影響が出てくるようになります。
そこで今回は、口呼吸の影響や改善方法などについて解説していきます。
目次
1 口呼吸になる「3つの原因」
子どもが口呼吸をするのは、次のどれかが原因になっていることがあります。
・鼻がつまっている
・歯並びが悪くなるような癖がある
・口周りの筋肉が未発達
それぞれについて、解説していきます。
1-1: 鼻がつまっている
鼻がつまっているのが原因で、口呼吸をするようになる場合があります。
鼻の周囲や頬の奥や目頭の奥には、副鼻腔という空洞があって、鼻の中に繋がっています。
副鼻腔内が細菌感染になったり、虫歯の炎症が深刻化していたりすると、急性副鼻腔炎を引き起こす可能性が高いです。
急性副鼻腔炎が慢性化してしまうケースでは、鼻づまりや顔面痛などの症状が強く出るようになって、鼻呼吸がスムーズにできなくなるため、口で呼吸するようになります。
1-2: 歯並びが悪くなるような癖がある
次のような動作が習慣化していると、子どもの歯並びが悪くなりがちです。
・指しゃぶり
・爪を噛む
・唇を噛む
・うつぶせ寝
・頬杖を付く
・舌で歯を押す
上記のような癖が習慣になっていて頻繁にやっていると、歯並びが悪くなって、口呼吸をするようになります。
歯並びが悪くなると、口唇閉鎖不全といって、唇をキュッと閉じること動作ができなくなり、「お口ポカン」といった常に口が開いている状態になりがちです。
特に、出っ歯や受け口といった、上下のどちらか一方の歯が前に突き出ている歯並びは、唇をしっかりと閉じられないだけではなく、顔が前に出ているような見た目になってしまいます。
1-3: 口周りの筋肉が未発達
現代では、柔らかい食事が多く、口周りの筋肉が正しく発達していない子どもが多くなっています。
例えば、低舌位とは、正常な位置より舌が低い位置にあることです。
口を閉じた状態では、上の前歯の裏側あたりに舌がくっついているのが一般的です。
舌が下の方にあることで、空気を通る気道が圧迫されて狭くなります。
そうなると、鼻で呼吸するよりも口で呼吸する方が楽になるため、口呼吸をするようになるのです。
低舌位のように他の口周りの筋肉や機能が正しく発達していないと、口呼吸になりやすいです。
2 口呼吸を放置すると起きる「デメリット」
口呼吸を放置していると、次のようなデメリットがあります。
・虫歯・歯肉炎
・口臭
・アレルギー・病気
・出っ歯・開咬
・発音障害
2-1: 虫歯・歯肉炎
口呼吸は、口の中が乾燥しやすくなったり、細菌が増えたりする原因になります。
口の中が常に乾燥状態だと、唾液の効果が期待できません。
唾液には、汚れを洗浄したり、細菌の増殖を抑えたりする効果があります。
しかし、口の中が乾燥している状態では、唾液の効果も薄くなり、細菌の数が増えて虫歯や歯肉炎を引き起こしやすいです。
特に、乳歯の虫歯が深刻化すると、抜歯が必要になるケースがあります。
乳歯には、永久歯を正しい位置に誘導する役割があり、早期に乳歯を抜いてしまうと、永久歯が正常な位置に生えずに、歯並びが悪くなる可能性が高いです。
2-2: 口臭
口呼吸で口の中が常に乾燥した状態では、細菌の数がどんどん増えていきます。
細菌の種類によっては、悪臭のガスを発生させます。
細菌の出す嫌なニオイのガスが口全体に広がって、口臭になります。
2-3: アレルギー・病気
鼻の中にある毛や粘膜には、ホコリや細菌などを防ぎながら、酸素だけを取り入れることができる空気清浄機のような役割があります。
口呼吸では、空気中にある細菌も一緒に取り込んでしまうので、感染症や病気を引き起こしやすいです。
例えば、口呼吸をすることで、鼻の奥にある咽頭扁桃(アデノイド)というリンパ組織が炎症を繰り返すことで、大きく腫れることがあります。
アデノイドが炎症を起こすと、身体の免疫力が低下して、花粉症やアレルギー性皮膚炎といったアレルギーを発症するケースがあります。
また、アデノイドの肥大が原因で、子どもの顔の形がアデノイド顔貌になる可能性が高いです。
アデノイド顔貌は、歯が前に出る、二重顎になる、唇が分厚い、鼻が小さいなどといった特徴があって、症状が酷い場合にはアデノイドの手術が必要になることがあります。
2-4: 出っ歯・開咬
口呼吸や指しゃぶりなどの悪習癖(あくしゅうへき)は、歯並びが悪くなりやすいです。
例えば、舌で歯を押す癖があれば、歯は前に突き出るようになります。
出っ歯は、見た目が悪くなるだけではなく、噛み合わせのバランスも悪く、顎関節症を引き起こしやすくなります。
また開咬とは、上下の前歯の間に大きく隙間ができている状態のことです。
開咬になると、前歯が噛み合わないので、前歯を使って食べ物を噛み切ることができなくなったり、奥歯に負担がかかって痛みが出たりする原因になります。
2-5: 発音障害
口呼吸は、発音障害にも影響がでます。
例えば、口呼吸が原因で低舌位になっている場合では、舌の位置が低いため、うわ顎に舌を打ち付けて発音する必要がある「タ行」や「ナ行」をハッキリと言葉にすることが難しいです。
また、口周りの筋肉が弱くて唇の筋力が足りないと、上下の唇を付ける必要がある「マ行」「パ行」「バ行」などの発音が、ハッキリと言えなくなる場合が多いです。
3 口呼吸を改善する3つの方法
子どもの口呼吸を改善するには、次の3つの方法があります。
・耳鼻科、小児科を受診する
・矯正治療
・口腔筋機能療法を受ける
それぞれの改善方法について、詳しく解説していきます。
3-1: 耳鼻科、小児科を受診する
鼻づまりが原因で口呼吸を引き起こしている場合には、耳鼻科や小児科を受診しましょう。
ただ、アデノイドは、鼻の一番奥にあるリンパ組織なので、口を開けても赤く腫れていたり、肥大していたりするのを、目で確認することができません。
そのため、検査やレントゲン写真でアデノイドの状態を確認する必要があります。
アデノイドの肥大は、年齢と共に小さくなるので、積極的に治療をしないのが基本です。
しかし、アデノイドが原因で、中耳炎を発症させるケースも少なくありません。
その場合には、薬を使って治療していくことが多いです。
子どもが、痛みや違和感が訴えた時は勿論、風邪をひきやすくなった、頻繁に口をポカンと開けていると感じたら、一度、耳鼻科や小児科に相談してみると良いでしょう。
3-2: 矯正治療
悪くなった歯並びは、矯正治療で歯並びを整えることができます。
特に、永久歯が完全に生え揃っていない歯並びの状態では、顎の成長も同時に促すことができるため、歯並びがキレイになりやすく、後戻りしにくくなる可能性が高いです。
後戻りとは、キレイになった歯並びが元の位置に戻ろうとする現象のことです。
大人の矯正治療は、顎の成長が完了しているため、歯を動かすのも難しく歯が元の位置に戻ろうとする力も強くなりがちです。
一方、子どもは、顎の骨が柔らかくて歯を動かしやすく、移動した場所でしっかりと固定してくれます。
矯正治療を行うことで、しっかりと唇を閉じられるようになるので、食べる時にクチャクチャと音が鳴ったり、言葉を発するたびに「何?」と聞かれたりすることが少なくなるメリットもあります。
さらには、矯正で見た目が大きく変わることで、自分に自信が持てるようになり、前向きな気持ちになれます。
3-3: 口腔筋機能療法を受ける
口腔筋機能療法(MFT)とは、口周辺の筋肉や舌の筋肉を正しく機能させるトレーニングのことです。
トレーニングには、さまざまな種類があります。
例えば、口輪筋ボタントレーニングという方法は、次のような訓練です。
・大きめのボタンに糸を巻き付けた状態で、ボタンの部分を唇だけで加える
・糸がピンと張るくらいまで伸ばして、引っぱっていく
・唇からボタンが出ないように、しっかりと唇に力を入れる
・糸を引っ張った状態を30秒ほど続ける
・この流れ(1セット)を1日3~5セット行う
他にも、スポットポジションといって、舌がうわ顎の裏に付くように動かすトレーニングがあります。
上記のように、筋肉が弱くなっている部分に効果的なトレーニングをして、本来の機能を取り戻していきます。
MFTは、矯正治療と並行して行うケースが多いです。
矯正装置で正しい位置に歯並びを誘導しながら、筋肉を鍛えることで、口のバランスが良くなり効率的に歯並びが整えることができます。
4 口呼吸を治して、心と身体を健康にしよう!
口呼吸には、次のようなデメリットがあります。
・虫歯や歯肉炎
・口臭
・出っ歯や開咬などの歯並びになる
・アレルギーや病気になりやすい
・発音障害
上記の他にも口呼吸には、見た目の悪さやアレルギーを引き起こすため、ネガティブな気持ちになりやすく、心も不健康にしてしまう恐れがあります。
子どもが、心身ともに健康で楽しく過ごすためにも、なるべく早めに口呼吸を改善しましょう。