スポーツにおける身体能力。
実は歯の噛み合わせが重要なファクターであることをご存じでしょうか。
世界で活躍するアスリートたちは、結果を出すために日々トレーニングに励んでいます。
また、プロだけでなくサッカーやバスケットボールをはじめとするアマチュアのスポーツ選手も増加傾向です。
アスリートが持ち前の力をすべて発揮するための歯列矯正について解説します
目次
1 歯の噛み合わせのよさが高いパフォーマンスを生む
歯と歯を噛み合わせることは食べるときだけに必要な行為ではありませんよね。
よく「歯を食いしばってがんばる!」といわれるように、人は力を入れるときに無意識に歯を噛みしめるものです。
「噛む力」が「身体能力」にどのように影響するのかみていきましょう。
1-1 しっかりと噛む力で生まれるメリットとは?
スポーツにおいて力を入れたり、力を伝達したりする動作は基本です。
それらの能力発揮と「噛む力」には密接な関係があります。
奥歯のしっかりとした噛み合わせが、身体能力に関係する様々なメリットを生み出します。
・身体のバランスを安定させる
体操やフィギュアスケートのように身体バランスが重要な競技では、「噛む力」が強いとより安定します。
噛み合わせがずれているとバランスが崩れやすくなります。
バランスの崩れによって重心が偏り身体がふらついて、余計なエネルギーを使うことになるのです。
・筋力を活発にする
スポーツのパフォーマンス向上に必須なのが筋力です。
よい結果を出すためには、スピードやパワーを生み出す筋力を活性化しなければなりません。
「噛みしめた」という情報が脳の運動野に伝わり、脳は骨格筋などに指令をあたえます。
とくに一瞬の力が勝敗を左右するウエイトリフティングやハンマー投げなどの競技には重要です。
・脳の血流量を増加させ活性化する
歯を噛みしめると歯根膜が圧迫されて血管が圧縮し血液が脳に送り込まれます。
脳に送り込まれた血液が増えると、反射神経や記憶力、判断力、集中力が高まるといわれています。
スポーツでは試合の流れや相手の動きを瞬時に判断して、身体の適切な動きをするよう脳が働きかけます。
1-2 噛みしめる力が必要ないスポーツ
すべてのスポーツで噛む力が必要なわけではありません。
たとえば、短距離走の場合はスタートの前後には最大の瞬発力を発揮するため、ぐっと噛みしめます。
ですが、トップスピードでは噛みしめていると余分な力が入ってパフォーマンスが低下するといわれています。
持久力が大切なマラソンや反応速度が必要な卓球などでも必要ありません。
一般に噛みしめる力は、比較的ゆっくりした動きのなかで発揮され、高速で発揮される動的パワーに対しての増強効果は得られにくいとされています。
ただ、歯並びが悪いと食事がしにくく虫歯になりやすいなど、全身の健康状態への影響があります。
表彰台を目指すアスリートは、見た目の美しさを求められやすいものです。
整った歯列は、健康のバロメーターとみなされることもあるため、アスリートにとって大切なファクターになるでしょう。
2 アスリートのための矯正治療
スポーツ競技の種目ごとに適した矯正治療があります。
将来のアスリートのためには、小児矯正にも注目したいもの。
歯列矯正は、ブラケットをつける表側矯正や裏側矯正、マウスピース矯正が主な治療方法です。
それぞれの治療方法にしたがって、向くスポーツ種目と向かない種目など、特徴を説明します。
2-1 未来のアスリートのための小児矯正
幼いころから身体能力が高いお子さんの場合、将来スポーツ選手になってほしいと願う親御さんは多いでしょう。
もしお子さんの歯並びが悪いと、せっかくの能力が発揮できなくなるかもしれません。
小児矯正を開始すべき時期は、成長発育や噛み合わせの状態によってそれぞれ異なります。
上下の顎の大きさに違いがあったり、左右のどちらかにずれていたりするときは、6歳前後から開始するとよいでしょう。
出っ歯や叢生などの場合は、永久歯が生えそろう前、小学校高学年までに治療開始をおすすめします。
成長発育を利用し、早期に噛み合わせ改善できます。
お子さんの将来にわたるアスリートへの道を、小児矯正によって切り拓ける可能性があります。
2-2 すべての症例に対応可能な表側矯正
矯正装置を歯の表側につける表側矯正の最大の特徴は、ほぼすべての症例に適用できること。
さまざまな種類の装置があり、歯を動かす治療効果も高く、裏側矯正やマウスピース矯正よりも安いです。
また、表面にあるため汚れを目視で確認しやすく、衛生面も優れています。
舌への影響がほとんどないため、発音に影響することもありません。
目立ちたくない人のために、金属以外のプラスチックやセラミック、サファイアなどの素材がブラケットに使用できます。
ただ、スポーツの種類によっては表側矯正が適さないこともあります。
ほかの選手と接触する可能性があるスポーツです。
たとえば、サッカーやラグビーなどは、ぶつかったときに唇を傷つける危険性があります。
2-3 唇を傷つけにくい裏側矯正
格闘技などの激しいスポーツの場合は、唇に装置があたらない裏側矯正が適しています。
サッカーやラグビーなど、ほかの人と接触するスポーツでも表側矯正よりも唇を傷つけるリスクは少なくなります。
表側矯正と同じようにほぼすべての症例に適応できますが、前歯の噛み合わせが深いと、下の歯が上の装置にあたることがあるので注意が必要です。
裏側矯正の最大の特徴は目立たないこと。
見た目が気になると、気持ちが落ち込むこともあるものです。
また、裏側矯正はつねに唾液が循環していますので汚れが付着し固まりにくいというメリットもあります。
裏側矯正はほぼすべてのスポーツが可能ですが、表側矯正も同様、ブラケットをつけていると、今までのスポーツマウスガードの装着が困難になる可能性もあります。
ボクシングや空手、アメリカンフットボールなどのアスリートは、マウスガードの装着も考慮して歯科医師に相談し、治療計画を立てる必要があるでしょう。
2-4 すべての競技が可能なマウスピース矯正
いちばん矯正装置による怪我のリスクが少ないのがマウスピース矯正です。
ほぼすべてのスポーツに適応できます。
透明に近い装置であるため、見た目も目立ちません。
ほかの選手との接触しないスポーツの場合も装着時の違和感が少ないという理由でマウスピース矯正を選ぶ人がいます。
表側矯正や裏側矯正と比べて、適応症例が少ないというデメリットがありましたが、治療実績の積み重ねと技術革新で適応症例が幅広くなってきています。
自分で取りはずせるため、大切な試合などのときは取りはずして、違和感なくスポーツに集中することが可能です。
取りはずして、歯を磨けるので衛生面におけるメリットもあります。
3 まとめ アスリートの能力を引き出す矯正治療
スポーツの世界では、少しの身体能力の違いが勝敗を決めることになります。
同じように鍛錬していても、歯を噛みしめる力の差によって最大のパフォーマンスが得られたり得られなかったりします。
一般の人も身体バランスは重要ですが、アスリートにとってはさらに大切な要素です。
歯並びを整えて噛みしめる力を向上させることで、眠っていた力を呼び覚ませるかもしれません。