これから歯列矯正を始めてみようと思っている初心者の方は、おそらく「どんな種類があるの?」「何を基準に選べばいいのかわからない」と悩むことがあるかと思います。
費用、治療にかかる期間、それぞれの矯正に存在するメリット・デメリットなど……どれを重視するかは、もちろん人によって様々です。
とくに接客業では、「見た目」の問題は切っても切り離せません。そこで本記事では、「人前で喋ることが多い」「矯正していることを周囲に知られたくない」という方のために、目立ちにくい矯正治療方法について詳しくご紹介していきます。
目次
(1)矯正治療とライフスタイル
矯正治療を選ぶ際、多くの人は費用や治療期間に目がいきがちですが、自分の「ライフスタイル」に合わせて検討することも同じくらいに大切です。
(1-1)スポーツと矯正治療
歯列矯正のタイプは、大きく分けて「ワイヤー型」と「マウスピース型」の2つ存在します。
例えば、格闘技や球技といった激しい運動を伴うスポーツに普段から親しんでいる方は、ワイヤー型の矯正治療はあまりおすすめできません。万が一口元をぶつけたときに、矯正器具で口内を傷つけてしまう恐れがあるからです。
(1-2)接客業と矯正治療
基本的に矯正治療は、歯の位置を正常に戻すまでに数年かかるものです。治療に臨む際は、「矯正器具を長期間使用し続けても日常に支障がないか」という点も十分に考慮しなくてはなりません。
とくに接客業に従事している方にとって、歯の表側にワイヤーを装着する矯正方法は、審美的な面で大きな懸念となり得るでしょう。
「安いから」という理由だけで治療を選ぶと、あとから後悔してしまうことになる可能性もあります。まずはかかりつけの歯科医師に相談して、運動習慣や職業などのライフスタイルに合った矯正治療方法を提案してもらいましょう。
(2)歯列矯正の種類
以下に、多くの歯科医院で採用されている矯正治療をご紹介します。自分に合っているかどうか検討する際の参考にしてみてくださいね。
(2-1)ワイヤー表側矯正
矯正治療のなかでもっともポピュラーなのが、矯正器具を歯の表側に装着する「ワイヤー表側矯正」です。世界中の歯科医院で採用されているため、非常に豊富な症例数を誇ります。
ワイヤーの力加減は細かく調整可能で、手ごろな費用で速やかに矯正を終わらせたいという方におすすめです。ただし矯正器具が目立ちやすく、人前で喋ったり接客をしたりする方にはあまり向いていないかもしれません。
メリット | デメリット | 費用相場 | 治療期間の目安 |
・対応できる歯並びの症例が豊富
・矯正にかかる期間が比較的短い ・歯の移動を細かく調整できる |
・矯正器具が目立つ
・器具が口内に当たって痛いときがある ・汚れが溜まりやすく、虫歯や歯周病になるリスクがある |
70~150万円 | 1年半~3年 |
(2-2)ワイヤー裏側矯正(舌側矯正)
どうしても目立ってしまうワイヤーを歯の裏側(舌側)に装着することで、周囲に知られず矯正治療に専念できるのが「ワイヤー裏側矯正(舌側矯正)」です。
費用は表側矯正に比べてやや高くなりがちですが、ワイヤー矯正器具の効果を担保しつつ目立ちにくさを求めたい方には、選択肢の一つとして検討する価値があるといえるでしょう。
メリット | デメリット | 費用相場 | 治療期間の目安 |
・目立ちにくい
・表側矯正に比べて汚れが溜まりにくい |
・個人差はあるが滑舌しにくくなることも
・表側矯正よりも矯正期間が長くなりがち ・ある程度の矯正技術が必要で、歯列によっては対応できないことも |
100~150万円 | 3年~ |
(2-3)ハーフリンガル矯正
上下の歯を矯正する場合、一般的には「表側矯正か裏側矯正か」のどちらか一方を選択することになります。
しかし表側矯正にすると「目立つ」という点でデメリットが生じますし、裏側矯正は費用が増大したり歯列によっては対応できなかったりするなどの懸念点があります。
そんなときは「ハーフリンガル矯正」で、表側矯正と裏側矯正のいいところを取り入れてみましょう。上の歯はとくに人目につく部位ですので、ここには「裏側矯正」を採用して、普通にしていればあまり目立たない下の歯には、「表側矯正」を施します。
完全に目立たない矯正方法を選ぶのであれば、もちろん上下の歯をすべて裏側矯正にするのがベターなのですが、ハーフリンガル矯正は裏側矯正よりも総費用的には安くなる可能性がありますので、コストの面で懸念がある方にはぴったりの折衷案だといえるでしょう。
「せめて上の前歯だけは目立たないようにしたい……」「上の歯さえ目立たないようにできれば何とかなりそうだ」という方は、ぜひ検討してみてください。
メリット | デメリット | 費用相場 | 治療期間の目安 |
・目立ちやすい上の歯を裏側矯正にして、下の歯を表側矯正にすることで目立ちにくさと矯正効果の折衷的な意義がある
・上下を裏側矯正するよりも費用が安くなる |
・口を大きく開くと、下の歯に装着している矯正器具が見えてしまう
・上下の表側矯正よりは費用が増える |
100~150万円 | 2~3年 |
(2-4)マウスピース矯正
表側・裏側矯正は、ワイヤーを装着するために、食べかすが詰まったり、ブラッシングが行き届かなくて虫歯や歯周病になったりするデメリットが常に存在します。
しかし、透明なマウスピースを矯正器具として使用する「マウスピース矯正」なら大丈夫。着脱が自由ですし、いつでも綺麗に汚れを洗い落とせるため、衛生面でも安心です。
何より強みなのが、「人前で目立たない」「発音の邪魔にならない」ということ。表側矯正と裏側矯正の欠点を両方克服しているため、接客業に従事する方にぴったりの選択肢です。
メリット | デメリット | 費用相場 | 治療期間の目安 |
・透明なので目立たない
・着脱自由で食事を楽しめる ・金属アレルギーの心配がない ・清潔を保てる ・スポーツや運動をしてもケガをしない |
・歯列の状態によっては対応できない
・推奨されている装着時間が長い ・歯が移動するごとに歯型を採取してマウスピースを作り直すため手間がかかる |
10~100万円 | 2~3年 |
(2-5)インビザライン矯正
高精度な3Dモデリングソフトを用いてマウスピースを作成することで、複雑な歯列にも柔軟に対応できるようになったのが「インビザライン矯正」です。
初回の検査で採取した歯型や噛み合わせのデータをもとに精巧なマウスピースを作成しますので、歯が動くたびに作り直すという手間もありません。
「接客業が忙しくて通院する時間がとれない」「定期的に病院に足を運べるという保証がない」という方は、通常のマウスピース矯正よりもインビザライン矯正が向いているかもしれません。
(3)まとめ
矯正治療では、数年単位で矯正器具を装着することになるため、長い目でみたときにその治療を無理なく続けることができるかどうかが大切なポイントです。
検討するうえで矯正治療にかかる「費用」はもちろん欠かせない観点ですが、職業を含めた自分の「ライフスタイル」に適しているかという点も忘れないようにしましょう。
とくに、人前に出ることの多い接客業に従事している方は、「ワイヤー裏側矯正(舌側矯正)」「マウスピース矯正」「インビザライン矯正」を候補に考えておくのがおすすめです。